学科紹介:応用化学科 教員LETTER

昆虫を目指してセンサーづくり

応用化学科 教授 澁谷 康彦 Yasuhiko SHIBUTANI

最近,人間社会では超分子化学という新たな学問領域が注目されていますが,昆虫の世界では大昔から超分子化学は常識のようです。例えば,図Aに示すように,蟻が餌場と巣穴と往復するのに図Bの構造のアルコールを放出しながら移動します。地面にはこの化合物以外にも多くの臭い物質がありますが,蟻のセンサはその化合物をはっきり見分ける(識別できる)のです。もし,この化合物で地球一周の道標を描くとしても,4 mgで描けます。この化合物を感知できるセンサは驚異的な性能です.当研究室ではここ15年間ほど高感度なイオンセンサを作ろうと研究し,これまでに多くのイオン認識化合物(ionophore)を開発しました。その仕組みを図Cに示します。例えば,図Cの左のように,黄色イオンだけを捕まえられるionophoreを5mg程度合成すれば,図Cの右の組成のポリ塩化ビニル(PVC)膜とすることで,黄色イオン測定用センサを作ることができます。図Dに、これまでに開発した代表的なionophoreの構造と基本的性能をまとめました。実際に医療分析で人の血清中のナトリウムイオンについては,ナトリウム ionophore (ビスクラウンエーテルやカリクッスアレン誘導体)を用いたセンサで測定されています。リチウム ionophore は,うつ病治療の際の血中のリチウムイオンの測定に有効です。血清中には様々なイオンやタンパク質などがありますが,その中で目的イオンの濃度を測定できるようになります。この他にも、高性能イオンセンサを開発しています。

これまでに開発したイオン感応物質

これまでに開発したイオン感応物質


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