現在、割り箸の消費量は年間約250億膳であり、そのうち98%が輸入です。みなさんも割り箸と聞くと、森林破壊や防腐剤漬けのイメージを抱く人が多いと思います。
割り箸の発祥は吉野地方だといわれており、広く使われだしたのは意外にも歴史が浅く、明治時代からだといわれています。吉野地方は杉や桧の産地であり、当時は建材よりも酒樽作りが盛んでした。この酒樽生産で余った廃材を有効利用しようというのが始まりです。つまり、割り箸は廃材の有効利用から始まったのです。
時が流れて現在、二酸化炭素の吸収源として森林が重要な意味を持つようになりました。日本の森林の約60%は人工林です。この人工林は人が手をかけて間伐しないと、吸収源にならないばかりか荒廃してがけ崩れを起こしたりして、下流に大きな被害をもたらします。国も補助金を増やして森林の維持に力を入れ始めました。ところが林業従事者に聞いてみると、せっかく大事に育てた木ですが、木造建築が減っていることと、安い外国産が大量に入ってくるので、売れ行きが思わしくないそうです。
空間デザイン学科と環境工学科の新入生は毎年、この吉野地方の川上村でオリエンテーションを行います。そのことがきっかけで、食堂に吉野産割り箸を導入しようとしています。これをお手伝いする形で、今年から卒研生と環境工学研究部のみんなで、営林から製材、そして割り箸工場などを見学したり、営林に携わる方々からお話を伺ったりしました。調べれば調べるほど、日本の森が手間暇をかけて作られて、高品質の木であるかということがわかりました。今は割り箸一膳が間伐に貢献できる森林面積について計算しています。
学生の皆さんにとって国産の建材を買うことはできませんが、間伐材の端材を使った割り箸を使うことで、ほんの少しですが日本の森林の維持に貢献することができます。
割り箸が食堂に並んだら、一度手に取って断面を見てください。年輪が2,3本入っているのがわかります。これは吉野林業の“密植(みっしょく)”という方法で育てられた木です。この生育方法は営林職人(山守)さんが手をかけてようやくできるもので、建材にすると普通の木よりも高い強度が出るそうです。
私が顧問をしている漫画同好会のみんなにも、割り箸をイメージしたイラストを描いてもらいました。国産の割り箸を使うことで、都会に住む皆さんが森を考えるきっかけになればいいなと思っています。