研究室VOICE!

電磁波が未だ出来ること

電子情報通信工学科 教授 小林 弘一 Hirokazu KOBAYASHI

小林 弘一

筆者が担当する<波動情報システム研究室>では、電磁波の中で特に応用が容易なマイクロ波ミリ波帯の電波に関する研究を行っています。Maxwellの電磁波の存在予測とHertzによる実測から既に百数十年以上が経ちます。この間、通信と情報技術(ICT)が私たちの生活に直接的間接的に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。ここでは、電磁波に直接関係した二つの応用研究の話をしたいと思います。

■ 壁の向こうに何がある?!
一つ目は電波の透過性に関する研究です。医療機関におけるX線CTとかMRIで想像できるように、電磁波は誘電体内を通過します。この性質から、建物内の様子を画像化する近距離レーダが考えられます。セキュリティ用の壁透過レーダ、水道管、ガス管、地雷などの地中埋設物探知レーダ、空港での危険物検知用レーダなどに応用できます。
 このレーダは一つ使い勝手の悪いところがあります。画像を作るためには、送受信アンテナを規則的に走査する必要があるのです。そこで、オペレータがアンテナを自由に移動させても画像が得られるような処理法を考案し、現在、研究室で確認中です(図1)。目標物が動いている場合は、ドップラ音を聞くこともできます。

■ レーダ画像から物体の誘電率が分かる?!
もう一つは電磁波の遅延現象を応用した研究です。地球上の殆どの物体を占める誘電体の誘電率情報はあらゆる分野での基本量です。マイクロ波帯では、例えば伝送線路内に小試料を充填し、その前後の変化から誘電率を算出します。問題は木などの空間内に誘電体が分布している場合、どう計測するかです。
これに対し私たちは、レーダ画像位置の変位と物体の誘電率の関係に着目した新しい計測法を考えました。電磁波の速度は、誘電体内では光速より遅くなります。この結果、電波画像の位置がずれます。壁などの均一に材料が配分されている場合(図2)は材料の誘電率分だけ、空間内に分布している場合(図3)は等価的な誘電率分の位置が変位します。現在、損失を含めた複素誘電率の計測システムを構築中です。誘電率(水分)と森林バイオマスは相関があることが分かっています。この計測法は地球環境保護に一役かっているかもしれません。

図1 アンテナが自在に走査できる壁透過型画像レーダの研究

図1 アンテナが自在に走査できる壁透過型画像レーダの研究

図2 金属平板レーダ画像の強度プロフィール:右側の二つのピーク値の差が画像位置のずれとなる

図2 金属平板レーダ画像の強度プロフィール:右側の二つのピーク値の差が画像位置のずれとなる

図3 空間内に分布した物体の等価的な複素誘電率の計測構想

図3 空間内に分布した物体の等価的な複素誘電率の計測構想


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