研究室VOICE!

東京オリンピックと熱中症対策

環境工学科 准教授 高山 成 Naru TAKAYAMA

高山 成

真夏のオリンピック
2020年に56年ぶりに東京オリンピックが開催されることになりました。マラソンといえばオリンピックでも花形競技ですね。前回の1964年の東京オリンピックでは、開会式が10月10日でマラソン競技は10月21日に開催されています(男子のみ)。ところが、2020年の東京オリンピックは、7月24日に開会式で女子マラソンが8月2日、男子マラソンは8月9日に開催される予定となっています。8月上旬における東京の日最高気温の平年値は、31.1℃と一年中で最も暑い時期にあたります。まさに“真夏”のオリンピックです。

東京のヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象とは、市街化が進んだ都市の中心部が郊外より高温になる現象です。気象庁の資料によると、1931年から2014年までの期間に東京の夏の平均気温は2.0℃上昇していたということです。こうした暑熱環境が厳しい条件下で運動を行う選手たちは、どの程度の熱ストレスにさらされるのでしょうか? ここでは、選手の体に対する熱の出入り(人体熱収支)を考えてみます。まず、体が受け取る熱(熱負荷)として、@体自身が作る熱 A日光(太陽放射)から受ける熱 B地面や周辺の建物から受ける輻射熱(赤外線の放射)といったものがあります。一方、体から出て行く熱(放熱)としては、@体からの輻射熱(赤外線の射出)A周辺の空気への熱拡散(顕熱交換)B汗が蒸発する時に体から奪う熱(潜熱放散)などがあります。こうした人体熱収支の解析は、熱ストレスのレベルを的確に評価する重要な手がかりとなります(図1)。

熱中症の危険度を管理する
ヒトの熱ストレス(温熱感)を評価する“ものさし”として、様々な温熱指標が提案されてきました。中でもWBGT(湿球黒球温度)は、もともと熱帯における軍事訓練の可否を、熱中症の危険度管理の観点から判定するために提案され、最近では高温な労働環境や運動時における熱中症予防などに活用されています。日本では環境省がWBGTを“暑さ指数”として紹介しており、日本体育協会は運動時における熱中症予防指針を、WBGTを基に公表しています。WBGTは物理的根拠にやや欠けるものの、算出に必要な気象要素の屋外環境における測定が容易で、その実用性の高さからISO-7243、JIS Z 8504などに規格化され、国内外で温熱指標として広く利用されています。

新しい温熱指標を開発するための研究に取り組んでいます!
生物圏気象環境学研究室では、新しい温熱指標を開発するための実験を、卒業研究として4年生が行っています(図2)。新しい温熱指標は、物理的な根拠が明確で熱ストレスをより正確かつ簡便に測定できることが目標です。彼らは気象観測をしながら自ら被験者(実験対象)となり、公園緑地や大通りなど都市域の様々な暑熱環境において、歩行・自転車・縄跳びなどの運動によって、実際に受けた熱ストレスの測定をしています。こうした実験の積み重ねと人体熱収支の解析から、工大発の新しい温熱指標が生まれ、広く利用されるようになることを夢見ています(図3)。

屋外での運動時に受ける熱負荷の模式図

屋外での運動時に受ける熱負荷の模式図

生物圏気象環境学研究室の4年生の卒業研究実験風景

生物圏気象環境学研究室の4年生の卒業研究実験風景

温熱指標の解析結果の一例

温熱指標の解析結果の一例


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