不安定な9員環エンジイン骨格を有する抗腫瘍性抗生物質N1999-A2の全合成に初めて成功し、天然物の絶対配置やチオールを引き金とした活性発現機構を明らかにしました。更に、天然物の立体異性体や構造類縁体を効率的に合成し、DNA切断や細胞毒性の発現に重要な構造因子やDNA切断機構について分子構造レベルで明らかにしました。本合成手法を応用し、肝細胞癌治療薬ネオカルジノスタチンのアグリコン部の全合成にも成功しました。
シガテラ食中毒の原因物質であるシガトキシンおよびCTX3CのABCDE環部の合成に成功しました。構造多様性のあるシガトキシンとCTX3Cに対して、四環性化合物(ABCD環)を共通中間体とした分岐的な合成戦略を開発しました。
ヤマブシタケから単離された神経成長因子合成誘導物質、エリナシンEのCDE環部の立体選択的な合成に成功しました。分子内Pummerer型反応を用いるヒドロイソベンゾフラン骨格の新しい合成法を開発しました。全合成を目指して更なる検討を進めています。
一酸化炭素を用いるラジカル反応として、ヒドロキシメチル化反応を開発しました。光照射下で行うことで、常圧かつ有機スズ試薬を用いないクリーンな系を確立しました。本反応を用いてポリケチド天然物の全合成に成功しました。また、ヒドラジンを脱離基とした新しい環化反応を開発しました。
有機触媒による[4+2]型不斉付加環化反応を用いて、カルバペネム系医薬品の鍵合成中間体のエナンチオ選択的な合成を達成しました。選択性や収率の向上を目指して更なる検討を行っています。