人工生命とは

人工生命とは文字通り人工的に生命を作り出し、その振る舞いや特質を調べ、解析する事により、様々な問題の現象の本質を探ろうとするものです。

問題と出来るものは非常に多く、例えば動物の遺伝的な進化から、物質の制御、株価の動向など多岐に渡って扱う事ができます。この様な問題を人工生命として扱う場合、たしかに抽象的で難しい部分もありますが、作り出した生命が互いに影響し合い予想もしなかった新たな発見(これを「創発」と呼びます)をもたらす時もあり、これが人工生命系の研究の醍醐味であると思います。


ソフトウェアシステム研究室では、生命の一つ一つをエージェントと呼ばれる人工生命体を創り出し、それらエージェントが互いに影響し合う事で問題に取り組む、マルチエージェントシステムを用います。そして、このマルチエージェントシステムを用いて、それぞれのテーマに従って研究を行っています。



人工生命の研究は、ソフトウェアや機械、遺伝子操作などで人工的に作られた生命体を使って、世の中の仕組みを解き明かすことを目指します。

例えば、
 ・人間が行った場合、経済損失が大きい、あるいは危険である、という作業や行動の影響を、人工生命を使って安全に調べる
 ・日常使用するものや環境の変化が、何世代にも亘ってどのように生体に影響するかを、人工生命で短期間に調べる
など、実際には試しにくい事柄を確かめます。

 私たちのソフトウェアシステム研究室では、これまでソフトウェアで作った人工生命を用いて、

○(時間とともに価値が減少する)減価貨幣の有効性検証
経済を活性化させるために、手持ちのお金を貯蓄ではなく消費に回すことを目的に、時間の経過とともに価値が低下する貨幣を導入した社会を作り、その効果を検証する。

○自律ロボットによる効率的コンテナ配送
荷揚げ港において、各地へ効率的にコンテナ搬送するために、クレーン、搬送車、荷物の集積場所の三要素を、状況に合わせて最適に組み合わせる方法を調べる。

○大規模火災現場の再現
火災現場での人間の行動を再現し、人間の心理や行動パターンを調べる。その結果をもとにして、被害の少ない建築物、避難誘導案内等を考察する。

○渋滞吸収走行の効果検証
渋滞が発生しにくい車の走行方法が提案され、特定の状況下での実験で有効性が確かめられている。この走行方法が、他の状況でも有効であるかどうか検証するとともに、より効果的な走行方法を見つける。

○生命体・組織の自然淘汰
様々な、自然・社会環境を想定し、どのような能力を持った生物や組織が絶滅せずに生き残っていくかを検証する。

などを対象としたシミュレータを作ってきました。これらの研究により、人工生命を使って集団の変化を明らかにしたり、効率の良い仕組みを考えたりする方法がわかってきました。今後は、豊かな暮らしに結びつく仕組みを数多く提案することが目標です。