本稿は、いわゆるキャノンインクタンク事件の最高裁の判決を分析するものである。 先ず、最高裁と下級審とを比較し、両者の関係を整理する。ここでは、第一類型を評価し、最高裁の判断は知財高裁の第二類型の内容を引きずっていること等を述べる。 次に、最高裁の当てはめの妥当性を検討する。『特許発明の本質的部分』と認められた構成の再充足性をもって特許権消尽を判断する道筋に疑問点があることを指摘する。そして、それは特36条5項及び同条6項2号の発明記載の便宜による弊害の問題に帰着することを明らかにする。