職務発明制度改正によって会社の従業員と会社の間で紛争はなくなるのか

足立 剛

大正10年に特許法が改正され、職務発明における特許を受ける権利は従業者に原始的に帰属するものとされた。それから90年以上が経過した平成になって、特許法35条の「相当の対価」の額を巡って、会社の研究者が会社を相手に高額訴訟を提起する事案が相次ぐなど産業界を震撼させた。この状態は平成16改正によって一応鎮静化したが、産業界からは依然として運用負担の重さや紛争の可能性についての批判が根強く、平成27年改正に至った。本論文では、法改正の経緯や判例を調査し、平成27年改正によって会社の従業員と会社の間で紛争はなくなるのかについて検討した。その結果、紛争が減るかどうかは不透明であるという結論に至った。