特許権の存続期間延長と均等論について ~延長された場合の均等論適用可能性~

知的財産研究科修了生

 この論文では、様々な医薬品の戦略が存在する中で、判例をもとに延長された特許権の効力の範囲、均等論について明確にしていく。オキサリプラティヌム事件では、政令処分の対象物と同一のものだけでなく、「実質同一」の実施の範囲にまで、延長された特許権の効力が及ぶことが明示された。また、延長された特許権の効力の範囲に均等論を適用すると効力の範囲が広がりすぎるために、適用はできないとした。しかし、存続期間延長出願の段階でも、延長後の特許権の効力の範囲について、未来に起きるあらゆる侵害態様を予測して、政令の定めた処分の対象となった物に加えることは不可能に近い。このような中、実質同一の範囲だけでは、特許権者の権利保護の観点からすれば心許ない。均等論の適用を、複数の特許と1つの特許を総括的に考え否定するのではなく、延長された1つの特許として捉え、均等論の適用ないし類推適用を行うことで、権利者の保護の強化を行うことを検討しても良いのではないだろうか。