音楽の著作物における本質的特徴の新たな判断手法-分解比較論の必要性について-

伊能大補

音楽の著作物の翻案権(編曲権)侵害における表現上の本質的特徴の判断手法に注目し、現在用いられている本質的特徴の判断手法が音楽制作環境の急速な変化又は進化に対応し得るのかに疑問を抱いた事が本論文の出発点である。過去の複製権、翻案権侵害等の裁判例において音楽の著作物及びその他の著作物の本質的特徴がどの様な部分にあると判断されたのかを踏まえて、今日の音楽制作環境の変化と照らし、新たな判断手法として「分解比較論」を提起する。「分解比較論」とは、音楽の著作物の創作過程を「遡及」する事により一つの楽曲を一音毎に分解して行く手法で、楽曲の表現上の本質的な特徴をより明確に認定することが可能な判断手法である。