デジタルコンテンツと同一性保持権

幸長 沙知

従来、著作物とされてきたコンテンツがデジタル化され、その同一性保持権が問題となるケースが増加している。そこで、同一性保持権の意義、立法経緯等を分析するとともに、「ときめきメモリアル事件」等の裁判例を取り上げて検討する。
「ときめきメモリアル事件」上告審判決に見られるように、大量に複製・頒布されるデジタルコンテンツについて、ユーザによる著作物の利用・享受方法にまで同一性保持権が及ぶという解釈を採るならば、コンテンツの利用・流通を阻害し、ひいては、著作権法の究極目的である文化の発展をも阻害するおそれもある。従来の著作者人格権規定の厳格な解釈・適用を改め、権利制限規定の柔軟な解釈や立法的対応が必要である。