進歩性の判断における発明の認定に関する考察

高橋 智

本報告書では、リパーゼ判決の判旨と70条2項からさらに、明細書等を参酌する度合いを進め、発明の課題や効果をも考慮することが重要と考えた。本件特許発明1では新規性が認められるので、さらに容易想到な構成といえるかについては、甲1発明のものを、本件特許発明1と同一にするための「方向づけの技術思想」すなわち、進歩性判断における論理づけが必要であるが、甲1〜甲3及び甲24発明には、「動機づけとなり得るもの」の一つである「課題の共通性」は存在しない。また、主なる甲1発明には、長周期的な凹凸は不要なので、甲1発明に長周期的な凹凸を導入する他の動機づけも存在しない。従って、容易想到な構成とはいえないと考える。