進歩性の判断基準の変遷について-審査基準と判例の分析-

矢野 聡

 特許を取得する上で最も重要な要件は、発明の進歩性である。進歩性の判断は、特許庁では審査基準に則って判断される。近年、特許査定率が大きく変化していることに疑問を抱き、その理由を審査基準と判例の変遷に沿って分析・検討した。その結果、平成12年以降には審査基準は改定されていないにも関わらず上記変化が発生しており、進歩性有無の判断を安定して行うためには、証拠を基礎とした客観的かつ合理的な理論に基づいて当該判断を説明する必要があり、その判断は検証できるものでなくてはならない。しかし、その理論は出願人が実際に発明した過程とは全くの別物でも良いが、事後分析的な理論であってはならないとの結論に至った。