地理的表示の国際保護に関する軌跡と展望  ―生産地名称ブランドの利益を巡る 攻防―

大村 比香留

国際協定において知的財産権の一つとして扱われる地理的表示であるが、とりわけTRIPs協定ではその23条がワイン及びスピリッツに保護対象を絞った条項で異彩を放っている。本稿では、その制度の源流とも言えるEUにおける農業政策と地理的表示保護制度発達の経緯を追いながら、その過程に生じてきた欧州内部での様々な衝突を追う。そして国際レベルの保護対象に昇華されたことで新たに衝突することとなった国家間の対立例を見ながら、知的財産権であると同時に多面的な意義を持つ地理的表示保護制度のあり方について今後の方向性を考察する。