研究科長からのメッセージ

研究科長 小林 昭寛

研究開発の成果である画期的な発明やノウハウ、消費者を魅了する製品デザイン、高いブランドイメージ、人気のソフトやコンテンツ。これらは全て、企業の競争力の源泉です。こうした競争力の源泉を国内外で法律的に保護し、グローバルな規模でビジネスに活用するためのインフラが知的財産制度です。

社会、とりわけ産業界は、競争力の源泉を守り育てるために、知的財産を熟知した専門家を求めています。こうした社会的な要請に応えるため、本研究科は「知的財産のプロ」を育てることを目標としています。

知的財産分野は専門的で狭い領域と思われがちですが、実際には、法律とその実務、テクノロジー、国際関係、ビジネスなど、さまざまな分野が複合した領域です。それだけに企業等において必要とされる能力も多様であり、ひとくちに「知的財産のプロ」といってもさまざまなタイプの人材が必要とされています。

本研究科では、①「イノベーション支援人材」、②「グローバル知財人材」、③「知財マネジメント人材」の3種類の人材像を念頭において、総合的かつ専門的な教育を行っています。これらはいずれも日本の産業界が強く求めている人材像です。

本研究科は、日本で初めての知的財産専門職大学院の一つとして2005年度に開設され、今年度で11年目を迎えました。これまでの修了生の多くが知的財産の世界で活躍されています。これから入学される皆様、そして在学生の皆様が、知的財産のプロとして社会で活躍されることを期待しています。

知的財産研究科の特長

本研究科の目的

本研究科は、「イノベーションを支援するために必要な知的財産に関する知識・技能を備えるとともに、法律的素養、国際的な視野及びビジネス感覚をもった高度な専門的職業人を養成する」ことを教育上の目的としています。

養成する人材像

本研究科では「イノベーション支援人材」、「グローバル知財人材」、「知財マネジメント人材」の3種類の人材の育成を目指します。 もちろん、どれか一つの領域に偏ることなくバランスよく学修し、オールラウンドな人材になることも可能です。また、弁理士はイノベーション支援人材の一例ですが、他の領域の知識を併せ持つことで自分を差別化しようとする動きも強まっています。 。

多様なニーズに応える教育内容

知的財産分野は専門的な狭い世界と思われがちですが、実際には、テクノロジー、デザイン、ブランド、コンテンツ、法律、ビジネス、グローバルといったさまざまな要素に関係しており、その世界は意外に広いものです。

産業界における知的財産分野の主な業務としては、法律関係の業務、イノベーション支援業務、国際関係業務、戦略企画業務の4つが挙げられます。実際の知的財産業務は、上記の4つの主要業務をすべてこなせる一人の人間によって運営されているわけではなく、組織的な分業体制によって運営されています。すなわち、それぞれの得意な領域で力を発揮しつつ、不得意な領域は組織力でカバーするといったことが行われています。そのため、どのような知識・能力を必要とするかは、その人が所属する職場、ポスト、具体的な業務の内容などによって大きく異なります。

したがって、どのような知識や能力をどの程度修得したいかは、入学希望者の現状と将来の希望に応じてさまざまです。上記の4つの主要業務に関する知識や能力をバランスよく修得したい人がいる一方、特定の領域を重点的に修得したい人もいます。また、弁理士試験に必要な法律知識を重視する人がいる一方、イノベーション支援スキルや国際分野・ビジネス分野の知識を重視する人もいます。

そこで本大学院では、入学希望者の多様なニーズに応えるために、さまざまな授業科目を豊富に用意しています。授業科目の合計数は約60に及びます。そのため学習者は、豊富な選択肢の中から自分の将来像に応じた最適な科目を選択し、自分のニーズに合致した履修設計をすることができます。

これは、多様な知財経験を有する多数の専門教員を擁する本大学院が大きな強みとして持つ充実した教育体制です。

教育課程の概要

本研究科が提供する教育課程は、以下のように、知的財産分野の4つの主要業務に対応する4つの授業科目領域を中心として構成されています。(詳細は教育課程表と科目概要を参照

  1. 基幹法領域
    基幹法領域は、知的財産法を中心にした法律的素養(リーガルセンス)を身につける領域です。知的財産は法律で保護されることによって財産的な価値を持つものであり、法律を理解することは基本です。したがって知的財産分野の業務のためには、知的財産法を中心にした法律の素養が求められます。
  2. イノベーション支援領域
    イノベーション支援領域は、イノベーションを支援するために必要な知的財産に関する実践的な知識やスキル(イノベーションセンス)を身につけるための領域です。研究開発、デザイン開発、ブランド構築などの企業活動は競争力の源泉です。知的財産分野の業務には、こうした活動の成果を、上手に保護・活用することによって、イノベーションを支援するための実践的な知財スキル(権利取得・契約・訴訟の知識など)が求められます。
  3. グローバル領域
    グローバル領域は、知財関連条約、外国知財法、国際契約、国際訴訟の知識など、知財に基づく国際的な展開を見通す国際的な視野(グローバルセンス)を身につけるための領域です。企業活動のグローバル化に伴い、もともとグローバルな性格を持つ知的財産はますます国際的になっており、知的財産に携わる人材にとってグローバルセンスはますます重要になっています。
  4. ビジネス領域
    ビジネス領域は、知的財産のビジネス利用に関するビジネス感覚(ビジネスセンス)を身につけるための領域です。企業にとって知的財産をビジネスに活用することは最重要課題です。それにもかかわらず、知財のビジネス利用の側面を体系的に学ぶ機会は多くありません。この領域では、知的財産に携わる人材にとって、重要な知識・能力であるビジネスセンスを体系的に身に付けます。

イノベーション支援人材

「イノベーション支援人材」は、実践的な知財スキルをもって、研究開発、デザイン開発、ブランド構築などの成果を法的に保護し活用する人材であり、知的財産分野において広く一般的に求められている人材です。その意味では、知財人材の基本形ということができます。

グローバル知財人材

「グローバル知財人材」は、知財関連条約、外国知財法、国際契約、国際訴訟の知識のほか、一定の語学力などを備え、優れた国際感覚を持つ知財人材です。

知財マネジメント人材

「知財マネジメント人材」は、知的財産のビジネス利用に関する知識や能力を備え、知的財産や国際標準などを戦略的に活用できる人材です。