| 題 目 |
| ESPへのコーパスによるアプローチ |
| 要 旨 |
| 司会 深山晶子(大阪工業大学)
提案 井村 誠(大阪工業大学) 提案 野口ジュディー(武庫川女子大学) 提案 椋平 淳(大阪工業大学) 1. 趣旨 ESP教育の急速な広がりとともに、これまで一般英語を担当していた教員もESPクラスを担当する機会が増えてきている。ESPクラスを担当することになった教員が、まず最初に行わなければならないことは、当該専門分野のニーズを分析し、どのようなジャンルの英文素材が存在するのかを確認する作業であろう。次に英文素材を収集し、それぞれのジャンルに特有のコミュニケーション手法を分析した上で、それらを効果的に習得できる教材を作成していく。このように、ESPクラスを提供するためには、当該専門分野の素材収集と分析が欠かせない。こうした状況の下で、ESPクラスを担当する教員が担当分野の英語を分析する手段として、コーパス言語学に基づいた効果的なコーパスの利用法を知っておくことが必要となってきている。 当シンポジウムでは、まず、第1提案でコーパスを用いて実際にジャンル分析を行う方法を示し、第2提案で、その裏付けとなるESP理論・コーパス言語学理論の基礎知識を整理し、第3提案で、コーパスを、教授用リソースとしてどのように利用することが可能かを示す。提案後15分程度の質疑応答の時間を設ける。 2.提案 2.1. 「コーパスを用いたジャンル分析の手法」井村誠(大阪工業大学) 第1提案では、ESPに応用するためのコーパスの作成と、その分析の手法について述べる。まず素材として、インターネット上でFortune トップ50企業の年次報告(2001年度)におけるCEO Letterを収集した。CEO Letterはshareholderの維持・拡大を図るために、企業活動の内容を効果的に伝えるという明確なcommunicative purposeを持つジャンルである。本研究では、ジャンル分析の枠組みを用いて、CEO Letterのディスコース構造をmoveとstepに分類した上で、XMLによるタグ付けを行った。XML(eXtensible Markup Language)は、HTMLと同様にInternet ExplorerやNetscape Navigatorなどのブラウザに標準装備されたマークアップ言語であるため、XMLでマークアップされたコーパスは、そのままWeb-baseのデータベースとして、情報の共有が可能になる。そこで、さらに本研究では、ブラウザ上でキーワードを入力することによって、そのキーワードを含む文章をmoveとstepの情報とともに表示する検索プログラムを作成した。これによってCEO Letterの中で用いられる戦略的な言語使用、すなわち、情報の配列や、語彙選択、レトリック機能などを明らかにすることが可能になる。 2.2.「ESP教育におけるコーパス研究の意義付け」野口ジュディー(武庫川女子大学) 今日では、コーパス研究は、辞書や文法書作りには欠かせないものとなっているが、このコーパスは、ESP教育においても最適なツールとなる。 ESPは、はっきりした目的のための英語教育なので、教えるべき英語のジャンルが特定できる。例えば、工学部の学生の場合、英語のレポートや専門書の読み書きや国際会議での聞きとりや発表などのジャンルが考えられる。このように様々なジャンルを、当該分野の専門家のニーズ分析から特定し、各ジャンルのサンプルテキストを集めてコーパスを作成すると、便利な参考ツールができる。 第2提案では、専門分野を限ったコーパス(specialized corpus)作成における4つの留意点(rhetorical, grammatical, lexical, technical)に添いながら、ESP教育におけるコーパス利用の基礎理論を整理する。この提案で示すような専門分野を限ったコーパス作成は、ESPのジャンル分析には欠かせないもので、ESP教材作成の基本作業でもある。最近まで、ESP教育は専門用語の学習に力点が置かれてきたが、専門分野特有の情報の伝達法、例えば、情報をどのような順序で提示すると効果的にコミュニケーションできるかなどのレトリック面についてはあまり研究が進んでいない。そこで、本提案ではこうしたレトリック分析の手法に特に焦点を当てたい。 2.3.「コーパスを利用したESP的教授法」椋平淳(大阪工業大学) 第3提案では、再度Fortune トップ50企業のCEO Letterコーパスに戻り、その分析結果を踏まえて、実際の教授用リソースとしての利用法について考察を加える。 ESPの見地からすれば、特定のジャンルに属するすべての素材は、基本的に目的(Purpose)・ 読み手(Audience)・情報内容 (Information)・言語特徴 (Language)の4点を共有する。CEO Letterは、株主(A)に対して、企業活動をアピールすることで投資の維持・拡大を図るため(P)には、どのような情報内容(I)を、どのような手法(L)で表現すれば効果的か、ということに関して、ある程度標準的なパターンを示している。その一方で、それぞれの企業間で、提示される情報項目およびその具体性(I)、情報配列などレトリックに関する側面 (L)にある程度の差異が見られ、これが各CEO Letterの読後感に大きな影響を投げかけている。これらのことから、効果的な表現法とはどのようなものかという点について、データを踏まえながら、学習者の思考を促すことが可能になる。 |