H8マイコンによるコントローラ(製作)

Last update: <2017/03/01 18:17:39 +0900>


  1. 制御基板の作成


    1. 感光によるプリント基板の作成


    2.  設計された基板はオリジナルのものであり市販されていない.ここでは感光基板によるエッチングによってオリジナル基板を作成する方法について説明する.感光基板とは,光によって基板のパターンを転写できるものである.付録Aに添付しているようなパターンを基板に写し,黒い部分は導通部分,白い部分は絶縁部分として基板を作成するものである.感光基板作成の手順について説明する.



    3. プリント基板の穴あけ
    4.  パターンにあわせて穴あけをおこなう.ここではミニドリルとドリル台を使って加工する(図4.15).基板の穴は0.8φ〜1.2φの大きさでよい.ただし,モータドライバ部分は穴の径を大きくしておかないと部品を差し込めない.またソケット部分など穴が直線に並んでいるところで,穴の位置がずれてしまうと,部品が刺さらなくなるので注意が必要である.

       ドリルの刃を交換するには,ドリルの先端のチャックを緩める必要がある.まず,金属の棒状のものでドリルの先端(黒い部分)の穴を固定しておく.精密ドライバーなどを使うと先端が曲がるので止めておいたほうがよい.次にチャックハンドルをドリルのチャック(銀色の部分)の穴に引っ掛け,チャックを回す.チャックハンドルは銀色の鍵のような形をしており,ドリル台の電源ケーブルに結んである.

      基板の4隅に3mm径の穴を忘れずにあけておく.

      図4.15:ミニドリルとドリル台


      図4.16:チャックとドリルの刃



    5. 部品の取り付け

    6.  基板への半田付けは,部品の低いほうから,が鉄則である.図4.17は部品装着例である.

      1. 銀色のジャンパ線として,すずメッキ線をつけていく.

      2. 抵抗(4.7KΩ,黄紫赤金)を3箇所つける.

      3. 抵抗(10Ω,茶黒黒金)を3箇所つける.

      4. インダクタ(1μH,茶黒黒)を2箇所つける.

      5. 14pin ICソケットを3箇所,16pin ICソケットを1箇所つける.向きがあるので注意する.ICは後から挿す.

      6. ダイオード(1S10)を6箇所つける.極性があるので注意する.

      7. セラミックコンデンサ(0.1μF,104)を10箇所つける.

      8. マイラコンデンサ(0.015μF,153)を6箇所つける.

      9. マイラコンデンサ(0.022μF,223)を3箇所つける.

      10. マイラコンデンサ(0.22μF,224)を3箇所つける.

      11. 電解コンデンサを10μF,100μF,220μFをそれぞれつける.100μFは横に寝かせられるようにする.極性があるので注意する.

      12. .マイコンのコネクタ,電源コネクタ,モータ用コネクタをつける.電源コネクタはXHコネクタ(2pin),モータ用コネクタはXHコネクタ(3pin)を取り付ける.

      13. モータアンプL6203をつける.




      図4.17:部品の実装例




  2. DCコンバータ部作成

  3.  24V電源から5V電源に変換する回路として,図3.23に基づき作成する.部品の配置を図4.18に示す.この配置では,左側が入力,右側が出力になっている.入出力の部部にはXHコネクタをつけている.図4.19は基板のはんだパターンである.HRD051R5Eはユニバーサル基板の穴にぴったり入らないところがあるので,少しピンを斜めに曲げてから基板に取り付ける必要があった.


    図4.18:DCコンバータ部品の配置


    図4.19:DCコンバータ部のパターン


  4. シャーシの加工と定電圧電源の固定

  5.  コントローラや定電圧電源を収納するシャーシを加工する.ここではタカチ電機のUCY12-14-22GXを利用した.シャーシの底面にはφ4.2の穴を開け,定電圧電源固定用とする.詳しい寸法は図B.1に掲載する.シャーシの前面と背面のパネルには,スイッチ固定,ヒューズ固定,外部端子固定のための穴が必要である.詳細寸法は図B.2に示す.

     定電圧電源をシャーシの底面に固定する場合(図4.20),M4のネジで固定することになるが,あまり長いネジを使うと定電圧電源内部と干渉するのでM4-5やM4-6程度のネジを利用する.


    図4.20:定電圧電源をシャーシに固定する


     電源関係の配線をパネルにとりつける.図3.22に示すとおり,コンセントからの電源はヒューズ,スイッチを経て定電圧電源に接続される.図4.21はパネルにACコネクタ,ヒューズボックスを取り付けた様子である.電源部分の配線には,短絡のないように細心の注意を払い,熱収縮チューブでむき出し部分を覆っておく必要がある.ここは安全確保のため,大変重要な点である.


    図4.21:ACコネクタとヒューズボックスのとりつけ


     定電圧電源やスイッチ周りの配線は図4.22のとおりである.ここで利用するスイッチは,通電状態でランプが点灯する仕組みであるため,配線がやや複雑となる.図4.21からのケーブルは,それぞれSW1,AC2に配線される.2本のうち,どちらでも問題ない.一方,AC2からSW3,AC1からSW2に接続されている.スイッチ側の端子部分は,かならず熱収縮チューブで覆うことが重要である.また,定電圧電源との接続部分では,圧着工具を使い,圧着端子をカシメるのがよい(図4.23).参考までにスイッチの内部回路を 図C.1に添付する.


    図4.22:定電圧電源,スイッチ周りの電源


    図4.23:圧着端子



  6. ケーブルの作成


  7.  内部の回路を接続するため,ケーブルを作成する.ケーブルの種類は以下の通りである.

  8. 組み立て

  9.  これまで作成した部品を集約させ,ハードウエアを完成させる.4.1で作成したコントロール基板,4.2で作成したDCコンバータ基板,4.3の定電圧電源付き加工済みシャーシ,4.4の配線ケーブルのほか,H8マイコンボードとシャーシ内部のアルミ板が必要である.

     まず4.3で作成したシャーシにスイッチ類やコネクタ類を取り付ける.スイッチの配置は,パネルに向かって左側をモータアンプ用電源ケーブルのスイッチ,右側をDCコンバータ用電源ケーブルのスイッチと決めておく.このスイッチは電源投入の順序が重要な意味を持つので,気まぐれで入れ替えるなど,個性を発揮しないほうがよい.Dsubのコネクタは六角型オスメスネジスペーサー(M2.6-4)でパネルの内側から固定する.この状態のものを図4.33に示す.


    図4.33:電源,スイッチ関係を取り付けたあと

     
    図4.34:アルミの板に固定する(写真の基板は別のバージョン)


     次に1で作成したコントロール基板をアルミの板に固定する.アルミ板(UCC12-22)は基板の大きさより若干大きいサイズである(図4.34).基板を固定できるように,自分の基板の4隅にあいている穴と同じ位置に,現物あわせで3.2mm程度の穴をあける.図のようにモータアンプ側に寄せておくのがよい.加工した板にはプラスティック製のスペーサを取り付け,M3のネジによって基板を固定する.

     マイコン基板を取り付ける前に,基板側のADコネクタ(6pin),モータ用電源コネクタ(2pin)を接続しておくとよい(図4.35,4.36).また,基板をシャーシに固定するため,周囲4箇所にネジをとめ,アルミ板を宙吊りにする.このとき,ケーブルをうまく配置しないと基板がうまく固定できないので,取り回しを工夫することになる.アルミ板の固定が終わったら,モータ側のコネクタを基板にとりつける.3箇所あるので,間違えないように気をつける(図4.37).


     図4.35:ADコネクタの取り付け


    図4.36:モータ用電源コネクタ取り付け


    図4.37:基板側 モータ用コネクタ 取り付け


     マイコン側にも加工が必要である.図4.38のようにマイコン基板の2隅にプラスティック製スペーサを取り付けておく.また,このスペーサの穴の幅に合うように,DCコンバータの基板を加工しておく.図4.39はDCコンバータをマイコンボードに載せているものである.この方向で,DCコンバータの右下隅をネジで固定する.また,もう一本のスペーサに合う部分(図の親指のあたり)にあらかじめ穴をあけておき,2本で固定する.

     マイコンボードにマイコン用電源ケーブル,RS232C内部ケーブルを接続したら,基板本体にとりつける.また,DCコンバータの各コネクタにDCコンバータ用のケーブルと,マイコン用電源ケーブルを取り付ける.同じコネクタの形をしているが,間違えるとマイコンが壊れるのみならず,電源まで故障の恐れがあるので注意すること.


    図4.38:マイコンにスペーサを取り付ける 


    図4.39:DCコンバータをマイコンに載せる


     シャーシを閉じれば,コントローラの完成である(図4.40,図4.41).


    図4.40:完成状態(正面)

     
    図4.41:完成状態(背面)




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