真貝寿明 reviews:
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reviewed on 2002年10月3日

最近多発している数値相対論定式化論文

最近,依頼があって,数値相対論に関する レビューを書いた のだが,すでに記入漏れが2件.


Toward stable 3D numerical evolutions of black-hole spacetimes
Mark A. Scheel, Lawrence E. Kidder, Lee Lindblom, Harald P. Pfeiffer, Saul A. Teukolsky
gr-qc/0209115
published as Phys. Rev. D. 66 (2002) 124005

(すでにこのclubJでも紹介済みの)KST formulationの第3段. KST formulationの(¥gamma,¥hat{z})パラメータを動かしたら,Schwarzschild (Painleve-Gullstrand座標)の発展が長く(8000M位まで)追えるようになった,という報告.Lindblom-Scheel (gr-qc/0206035, to appear in PRD) で開発された,拘束条件の破れの成長率予測を用いて,パラメータの選び方と実際の数値計算での振る舞いを対応させようとしているが,まだ予測は完璧には一致しない.ピークは合うようだが(Fig.4).また,外側の境界条件を一度設定してパラメータを最適化してしまうと,境界条件を外側に広げてもその最適化効果は得られない(Fig.5)とも報告.これは新しい事実なのかもしれないが,単にパラメータが最適な共鳴を起こしているだけなのでは?

内容的には以上のことしか含まないBrief Report並みのレポート.今後こんな風に論文が量産されたら困りますなあ.


Improved numerical stability of stationary black hole evolution calculations
Hwei-Jang Yo, Thomas W. Baumgarte, Stuart L. Shapiro
gr-qc/0209066
published as Phys. Rev. D66 (2002) 084026

相変わらずto appearのstatusになってからpreprintサーバに載せるIllinoisグループ.BSSN formulationを元にしていくつかの工夫をさらに行うことにより,Kerr-Schild座標を用いたKerr BHの発展が長く追えるようになった,という報告.

具体的にここで行ったBSSNへの補正は,

しかし,これだけでは,octant symmetryの時はうまくいくが,full gridの時は安定性不足.
  1. ¥Gamma^iの運動方程式の ¥Gamma^i (div ¥beta) 項は,(div ¥beta)>0だと,¥Gamma^iを発散させるので,これをG-constraintを使って消去する.(45)式.
  2. Yoneda-Shinkai (gr-qc/0204002 to appear in PRD)によって提案された,case (B)のsimplified Detweiler補正.(46)式.
その他の条件はほとんどAlcubierre-Bruegmann (PRD63(2001)104006)と同じ.スライス条件は,lapseが1+logスライス,shiftがgamma-driver.BH excisionはcubic.
数値計算の結果は,dynamical変数の変化率を時間で見た.(定常時空の発展なので,変化率はゼロに落ち着くかどうかを見ている).Octant/Reflection symmetryを課した場合とfull gridでSchwarzschildの発展がどこまで追えるかを比べ,さらにBHを回転させたとき(0.9 J/Mまで)の比較も行っている.Fig.9/10は,回転BHにおける比較の図である.もっとも良かったA8の例では,(46)式補正が使われた.

2002/10/3現在,PennState, AEI, Caltechでこの論文の詳細検討が進んでいる.Alcubierre氏は,octant symmetryでしかうまくいかなかった計算が追認されてご満悦のようである.私にとっても,Yoneda-Shinkaiの補正提案が実際に試されて,正しく効果を上げたという事実は,頼もしい限りである.なお,Yoneda-Shinkaiの補正(C)は,顕著な効果が見られなかったとのコメントもある.(47)式.(これはもともとTime Reversal Symmetryを破るものではなかったので仕方がないかもしれないが).



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