序論



 ドップラー効果とは、音波や電波などの波の周波数が発生源や観測者との相対的な速度によって、周波数が異なって観測される現象のことである。
 発生源が近付く場合には波の波長が詰められて周波数が高くなり、逆に遠ざかる場合は波長が伸ばされて低くなる。同様に観測者が動く時、相対的に近付く場合には伝播速度が上がるために周波数が高くなり、遠ざかる場合は低くなる。
 普段私達が感じることができるこの効果は、光の場合でも同様に起こる。遠ざかる光源からの光は赤方偏移し、近付く光源からの光は青方偏移する。しかし、光の伝播は特殊相対性理論に従うため、通常の波のドップラー効果とは違った現象を見せる。
 この光の世界で起こるドップラー効果を発光体、観測者、それぞれの速度変化によりどう見えるのかシミュレーションを行う。このシミュレーションにあたって、ニュートン力学と特殊相対性理論を用いるのだが、ニュートン力学とは、S.I.Newtonによって完成された理論で、解析力学などとあわせて古典力学と呼ばれる。
 質点の運動の理論として、特殊相対性理論は速度が光速よりも十分遅いときニュートン力学で近似でき、量子力学は運動量が十分に大きい場合にニュートン力学で近似できる。またニュートンの万有引力理論は、重力が弱い場合の一般相対性理論の近似である。
 相対性理論とは時間と空間の物理学で、この時間と空間を時空と呼ぶ。相対性理論はA.Einstein一人によって完成されたものである。
 A.EinsteinはJ.C.Maxwellによって完成された電磁気学とニュートン力学の間に生じた矛盾を解決しようと研究を始めた。そして、ニュートン力学的な時間や空間の概念が誤っていることを見つけた。
 相対性理論の成立は、1905年に完成した特殊相対性理論、1915年に完成した一般相対性理論による。本研究で用いる特殊相対性理論は光の速さに近い運動を正しく記述するものである。私たちの日常扱うスケールでの有効な理論であるニュートン力学と、特殊相対性理論を、ドップラー効果で比較する。


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