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大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2012年度 卒業研究

「鉄道ダイヤの乱れによる影響の最小化 〜利用者不満度関数の提案〜」

情報システム学科 上田拓郎

2013/2/21 作成

概要 / 目次 / 卒業論文 /

概要

 鉄道ダイヤが乱れた時のダイヤ回復は,指令所という機関で行われるが,それは現場から遠く離れた場所で行われ,指令員のカンや経験に依存する部分が大きく,必ずしも利用者の視点でダイヤ回復が行われているとは限らない.そこで本研究では,鉄道利用者の不満度を評価する関数を定義し,利用者側に立った効率的なダイヤ回復の手法を検討した.   

 まず仮想の鉄道路線をモデル化し,列車の運行を再現するシミュレータを作製した.このシミュレータで,寺田寅彦の随筆で述べられている,ラッシュ時の市電の法則性(混雑した市電のすぐ後ろに空いている市電が続き,間隔をあけてまた混雑した市電がやってくる)を再現することを確認した.(図2)  ダイヤ回復の手法は,遅れている列車の前後の列車を意図的に遅らせ,列車の間隔をできるだけ均一にする手法(時間調整)を考えた.特に遅れている列車の前を走る列車を,何台,どれだけ遅らせるのが最適なのかを考察した.(図1)

 ダイヤ制御の良さを評価するために,利用者の不満度を表す関数U(t)を時刻tを変数として,

Ti=各列車の乗客の不満度=列車iの乗客数×列車iの遅れ(分)×列車iの混雑率
Sj各駅の乗客の不満度=駅jの乗客数×駅jの平常時と比較しての前の列車との時間差(分)

と定義した. U(t)の変化を不満度曲線とし,不満度曲線のピーク値の小ささ,不満度曲線の積分値の小ささ,不満度曲線がゼロに収束する速さの3つの評価尺度で,時間調整の結果を評価した. その結果,2分間隔で運行する路線で,とある列車をT=60秒遅らせたときは,不満度曲線のピーク値を最小にするならば,1つ前の列車を0.8T,2つ前の列車を0.5T,3つ前の列車を0.2Tだけ時間調整すればよいという結論になった.(図3) (後ろの列車を調整しても,上で定義した不満度の緩和には繋がらないので,今回は前の列車のみ調整することにした.)また,論文では他の評価尺度の場合の最適解や,路線が1周している環状線の場合について検討した結果も述べている.


目次

1 序論
    1.1 背景
    1.2 研究の目的
    1.3 論文の構成

2 鉄道路線のモデル化
    2.1 路線のモデル化
        2.1.1 線路のモデル化
        2.1.2 駅のモデル化
        2.1.3 列車のモデル化
    2.2 ダイヤの設定
    2.3 ダイヤグラムについて
    2.4 シミュレータの画面

3 利用者不満度関数の定義

4 寺田寅彦の市電モデル
    4.1 寺田寅彦の市電モデルとは
    4.2 寺田モデルの再現
    4.3 寺田モデルが成立する条件

5 運転整理について
    5.1 運転整理の手法
    5.2 時間調整とは
    5.3 時間調整を行ったとき
    5.4 どの列車を時間調整すべきか
    5.5 時間調整の最適解の探し方

6 最適な運転整理案の追究
    6.1 放射線の場合
        6.1.1 放射線の2分間隔ダイヤ
        6.1.2 放射線の4分間隔ダイヤ
    6.2 環状線の場合
        6.2.1 環状線の2分間隔ダイヤ
        6.2.2 環状線の4分間隔ダイヤ

7 まとめ

卒業論文