日本経営システム学会関西支部 −第1期

     
  1. 期 間

     1995年4月1日〜1997年3月31日
     
  2. 支部役員

     顧 問:栗山仙之助(摂南大学)
     支部長:能勢豊一(大阪工業大学)
     副支部長:中桐大壽(摂南大学)
     運営委員:下左近多喜男(大阪工業大学),森 建一(関西大学)
     監  事:大西 学(松下電器産業株式会社),阪口 弘(シャープ株式会社)
     事務局:椎原正次(大阪工業大学)
     
  3. 活動記録−1995年度

    第1回研究会(9/16実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館会議室B・参加者16名)
     報告者:栗山仙之助 氏(摂南大学)
     演 題:『製造業における経営システム』
     内 容:本講演では、製造業を対象とした経営システムについて論じられた。まず、経営システムの概念や定義、変遷について解説され、その後にマルチメディアやCALSが経営システムに果たす役割について、事例をあげながら説明された。最後に今後の経営システムの目指すべき形態として、従来から講演者が提唱している経営自動化システムの概要とその意義について詳説された。

    第2回研究会(10/28実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館会議室D・参加者10名)
    @報告者:中島健一 氏(大阪工業大学)
     演 題:『外注かんばん方式の安定性と最適性』
     内 容:本発表では、まず、確率的に変動する製品需要のもとで、外注かんばんモデルの定式化を行い、その安定条件を示した。さらに、平均費用を最小化する最適発注政策を求める問題を時間平均マルコフ決定過程として定式化し、最適発注政策と最適化された外注かんばん方式による部品発注政策とを数値的に比較した。その結果、需要分散、引き取り周期が大きくなるにつれて外注かんばん方式と最適発注政策との間に差が生じることが示された。
    A報告者:能勢豊一 氏(大阪工業大学)
     演 題:『海外における経営システム関連学会に参加して−イギリスおよびイスラエル−』
     内 容:本発表は、経営システムに関連のある2つの国際大会の動向について報告されたものである。一つは、International Symposium on Logistics(イギリス)であり、もう一つは、International Conference on Production Research(イスラエル)である。いずれの国際大会も報告者が、この夏に参加した学会であり、今回の報告はこの2つの国を中心に報告がまとめられた。そして、現在注目されている経営システムの研究分野や、外国人の研究発表スタイルの特徴等が話された。また2カ国の文化・歴史についても触れられた講演であった。

    第3回研究会(12/9実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館会議室D・参加者20名)
    @報告者:浦山重郎 氏(麗澤大学)
     演 題:『メディアの融合と情報産業の行方』
     内 容:インターネットを中心とするコンピュータネットワークの急激な発展は、情報産業の基盤をもたらしている。本発表では、情報通信ネットワークのアーキテクチャーの変貌が、LATENCYおよび電送速度とINTELLIGENT TERMINAL速度の乖離により引き起こされ、同時に情報産業のHIERERCHY階層も4レイアーへと変動していく過程を示した。さらに、このHIERERCHY階層のHOSTWAREの一部で新世代IPレイアーであるインターネットレイアーは、アカデミックIPとコマーシャルIPに二分されて、N-ISDNと融合して情報産業を牽引し21世紀の産業の中核になることを解説した。
    A報告者:熊谷明久 氏(シャープ株式会社)
     演 題:『シャープのEDIについて』
     内 容:本発表では、まずEDIの一般的な概要や特徴について解説された。そして、シャープ株式会社におけるEDI(資材VAN)の事例についての紹介があった。シャープでは現在数十万件の資材取引データである各種伝票等をEDIによって処理しており、その効果は図表を用いることで明確にした。最後に、最近話題のインターネットとEDIの違いについて明らかにされた上で、EDIの今後の展望についても述べられた。

    第4回研究会(3/2実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館会議室D・参加者15名)
    @報告者:梅原楠生 氏(株式会社ダイフク)
     演 題:『第3の利益源としての物流システム』
     内 容:低迷する経営改善のキーワードとして物流システムに注目が集まっている。従来から物流は、経済の暗黒大陸であり、@売上高向上、A生産性向上に次ぐ第3の利益源として着目されていた。しかし最近になってようやく実感として認知されつつあるのが現状である。これは、バブル崩壊後の我が国の経済状況が一変し、従来の施設では利益を獲得することが困難になってきたことに起因すると考えられる。そこで本発表では、今まで見落とされていた物流コストについて焦点をあて、ロジスティクス戦略を経営の柱にする企業について解説した。さらに物流システム構築のキーポイントを最近の物流環境に対応する各企業の動向と関連づけて論じた。
    A報告者:河野昌蔵 氏(河野昌蔵労務事務所)
     演 題:『労働災害をめぐる諸問題−安全衛生管理の必要性−』
     内 容:労働災害は「人と物との期待されざる異常な接触により生ずる」のが通常である。いったん災害が発生すれば労災補償にとどまらず、事業者が安全配慮義務違反による高額な災害補償を課せられる場合も少なくない。労働災害を防止するためには、「労働衛生の3管理と5本の柱(作業環境管理、作業管理、健康管理、安全衛生教育、安全衛生管理体制)」と機械設備の安全化(フェイルセーフ・フールプルーフの組み込み)を整備・充実する必要性が論じられた。さらに、VDT作業環境の整備についても解説があった。
     
  4. 活動記録−1996年度

    第5回研究会(4/20実施・松下IMPビル17階CSK会議室・参加者13名)
    @報告者:阪口 弘 氏(シャープ株式会社)
     演 題:『最近の経営情報システム』
     内 容:企業間の競争に打ち勝ち、次世代に生き残るためには、経営のあらゆる面に合理化を進める必要がある。そのなかで経営情報システムが、経営活動に及ぼす影響はきわめて大きいと考えられる。本講演では、経営情報システムの推進課題としてクライアント/サーバー方式,グループウエアー(ロータスNotes)の導入,グローバルへの対応−SAP,インターネット社会への対応等について解説があった。さらにユーザー主導でかつトップダウン型の経営情報システムの構築について報告者の見解が述べられた。
    A報告者:安井義孝 氏(株式会社CSK)
     演 題:『組織体におけるグループウェアの適用事例−自動化と増力化−』
    内 容:強い会社の条件となる経営資源を獲得し、これを維持・強化することは、企業が存続・発展するために重要である。本講演では、強い社員の育成,ビジネス・スピードの迅速化,業務の効率化の実現を目指したアプリケーション・システムの事例を中心に解説された。具体例として、「ワークフローによる出納,経理・購買システム」「グループウェアによる知識システム」等が紹介された。さらにグループウェアの活用例と評価についても触れ、経営活動におけるグループウェアの有効性について検証された。

    第6回研究会(6/29実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館会議室D・参加者16名)
     報告者:佐々木宏 氏(桃山学院大学)
     演 題:『CASEツールと情報リテラシー』
     内 容:近年のCASEツールはめざましい進歩を遂げ、その優れた操作性、利便性によって一般ユーザへの利用の途が開かれつつある。従来CASEツールを利用するためには、その背後にある設計方法論のマスターが不可欠と考えられてきたが、ツールを繰り返し使い、慣れることで方法論を特にマスターしなくても、モデル構築からデータベース構築までの設計手法の習得が可能であると考えられる。本報告では、このような観点から一般ユーザへCASEツールを直接適用することの可能性と限界について、報告者が担当している大学生への適用の事例をふまえて論じた。さらにCASEツールのデモを実際に行いその流れを検証した。

    第1回工場見学会(7/11実施・ダイフク株式会社滋賀事業所・日に新た館・参加者16名)
     見学先:ダイフク株式会社
     内 容:ダイフク株式会社の日に新た館には、20,000uの展示場にロジスティックスに関する製品80機種300点が展示されていた。自動倉庫、自動搬送車等が稼動しており、実際にどのように利用されているかを見ることができた。また新開発の無接触給電搬送システムの有効性について解説があった。この他にも自動仕分け機等の展示もあり、ロジスティックスの重要性が理解できた。さらに今回は、滋賀事業所のパレット工場も見学した。ここでは、骨材(スチール)入りの丈夫なプラスチック製パレットを生産しており、プラスチックの材料にスチールを挟んで、圧着する工程を見学した。工程自体は簡単な内容であるが、自動化が進み、ほぼ無人で運転が可能になっている。

    第7回研究会(12/7実施・大阪工大摂南大学創立60周年記念館セミナーF・参加者18名)
    @報告者:仲町英治 氏(大阪工業大学)
     演 題:『バーチャルファクトリ』
     内 容:本講演では、バーチャルファクトリにおける仮想生産の現状について解説された。仮想生産とは、ものづくりを正しい数理モデルを用いて仮想実現することを示している。この仮想生産は、@生産システムモデル、A生産シュミレーション、B仮想現実技術、C情報ネットワーク技術から構成されている。そして、仮想生産においては現実のものづくりと正しく一致することを保証するための物理・情報科学技術が適用されなければならないことが詳述された。さらに仮想生産により宇宙工場での希少金属の生成等や地球環境での極限物質の製造、DNA等の超ミクロな原子・分子材料創製が実現されることが示された。
    A報告者:中野 廣 氏(大阪産業大学)
     演 題:『就業のための大学教育を考える』
     内 容:わが国の諸制度は、戦後各分野において相対的に成果を上げていると考えられる。本講演は、就業につながる大学教育のあり方について、種々のアンケート調査をもとに検討したものである。学生に対しては、@担当科目に対する評価、A講義形式、B学生への自己啓発等の観点から分析している。またその一方で、企業へは@就職試験、A経済界から求められてる人材像等を考察した。その結果から、学力以外に必要となる要因とそれを実現するための仕組みづくりについて詳述された。さらに、企業における新たな総合評価システムの必要性についても触れられた。

    第8回研究会(3/22実施・大阪工業大学情報科学部1304教室・参加者32名)
    @報告者:浦山重郎 氏(麗澤大学)
     演 題:『国際アライアンスとインターネット』
     内 容:世界のテレコム事業は現在グローバルな規模でアライアンスが形成されつつある。この理由は、サイバー・ビジネスの飛躍的な増大によってテレコム・ネットワークのアーキテクチャーがインターネットを含むサイバー・ネットワークに急激に変貌するためである。すなわち、高付加価値のミドル・ウエア及びアプリケーション・レイヤーへテレコム・ネットワークが急速に移行しつつある。このために従来のテレコム事業はワールドコムにみられるようにサービス・プロバイダー、CAP業者、長距離通信事業者が国境を越えて結合し、グローバルなコンピュータ・アプリケーションを提供する戦略情報産業へ変貌する。このサイバー・ネットワークは、今後さらにディジタル化された放送メディアをも吸収し画像を中心とした音声、データーを含むマルチメディア産業へ向かうと予想できる。そのため国際回線の広帯域化、足廻り回線の多様化(CATV、ADSL、ISDN、無線通信など)のさらなる技術革新が要請される。
    A報告者:小堀研一 氏(大阪工業大学)
     演 題:『ヒューマンインタフェースとしてのバーチャルリアリティ』
     内 容:本講演では最近話題となっているバーチャルリアリティの現状ついて技術解説を行い、応用されている分野での実用例が紹介された。また、ヒューマンインタフェースという観点から工業デザイン分野での造形ツールにバーチャルリアリティを適用したシステムの特徴についても説明された。さらに、21世紀の都市計画にこの技術を用いて、バリアーフリーな仮想都市をコンピュータ内に設計することで、事前にウォークスルーできるシステムについて詳説された。
    B大阪工業大学情報科学部見学会
     内 容:講演の終了後に情報科学部の施設見学会を行った。主な設備として、小堀氏の講演の実演を兼ねたバーチャルリアリティ室の見学を初め,その他にワークステーション教室、パソコン教室、各種サーバー類、並列コンピュータ、図書館、画像編集を目的としたメディアセンター、DVD等のメディアが利用できるLL教室、さらに、各教員の研究室が案内された。