ページトップへ戻る

鋼・コンクリート複合橋梁の耐火性に関する研究

都市デザイン工学科 
教授 大山 理

大山 理
2009.03.05
  • 写真-1:実橋を用いた火災試験の状況

    写真-1:実橋を用いた火災試験の状況

  • 図-1:受熱温度-時間関係

    図-1:受熱温度-時間関係

  • 写真-2:コンクリート床版下面の損傷状況

    写真-2:コンクリート床版下面の損傷状況

 近年、タンクローリー車など車輌の炎上および不審火や放火により、橋梁が火災を受ける事例が多く報告されています。例えば、2007年4月のアメリカ・サンフランシスコでの事例では、タンクローリー車の横転・炎上により、高架橋の2スパン部分が、わずか20分で崩落しました。わが国でも、2008年8月に、首都高速池袋線で、タンクローリー車の横転・炎上により、橋桁ならびにコンクリート橋脚が大きな被害を受け、大規模な車線規制と橋桁の取り替えが約2ヶ月にわたってなされました。

 このように、橋梁が火災の影響を受けると、最悪の場合、崩落も考えられ、崩落に至らない場合でも、調査や補修などによる長期間の交通規制が行われます。したがって、被災した橋梁の損傷状況や安全性を迅速かつ適確に判断することが必要となりますが、今日までに火災を受けた橋梁に対する診断法は確立されていないのが現状です。

 そこで、当研究室は、耐火に関する研究プロジェクトの一貫として、2007年11月末に、鋼・コンクリート合成桁橋が火災を受けた場合の鋼桁の受熱温度、変形量ならびにコンクリート床版の損傷状況などを把握するために、阪神高速道路(株)の協力を得て、実橋を用いての火災試験を行いました。その結果、鋼桁の受熱温度は、最高800℃に達し(図-1参照)、鋼桁ウェブは約20mm面外に変形しました。一方、コンクリート床版下面には、多数のひび割れが確認されました(写真-2参照)。

 さらに、合成桁橋が火災を受けた後のずれ止めの性能を把握するために、加熱後、自然冷却したスタッドに対して、静的および繰り返し押抜き試験を実施しました。その結果、最大せん断力は大きく低下しないものの、ずれ特性や疲労強度に著しい低下が見られました。

 現在、八幡工学実験場に耐火実験棟を建設中で、2009年2月末、完成予定です。完成後は、橋梁が火災により被災した際の診断法や補強法の確立に向けて、種々の加熱・載荷実験などを行っていく予定です。