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身近な環境・エネルギー

環境工学科 
教授 大澤 利幸

大澤 利幸
2015.09.29
  • 南禅寺水路閣を流れる琵琶湖疏水

    南禅寺水路閣を流れる琵琶湖疏水

  • バッテリー研究コンセプト

    バッテリー研究コンセプト

 京都の街並みを散策すると、数多くの文化遺産に触れることができます。洋風近代建築もその一つ、烏丸蛸薬師下ルには辰野片岡建築事務所が手掛けた旧北國銀行のレンガ造りの建物など本学初代校長片岡安の足跡に出会うこともあります。南禅寺の境内を貫く水路閣も建造物として素晴らしい景観です。水路閣は景観だけでなく、その上を琵琶湖疏水の水が流れています。現在も水道橋としての役割を果たし、世界近代化遺産、土木遺産に登録されています。
 蹴上には片山東熊の設計による重要文化財に指定の建築物があります。疎水を利用した水力発電の制御室です。明治初頭の京都再生に賭けた疎水事業は、米国の最新の水力発電技術をいち早く取り入れています。疎水により発電した電力は、日本で初めて市電の開通に使われました。この疎水を利用した水力発電は、明治24年から今なお160kWの電力を供給し続けています。
 私たちの使う電力のほとんどは、火力や原子力など熱エネルギーを経由して電気エネルギーに変換していますが、様々なエネルギーを一旦電気エネルギーに変換できれば、極めて高い効率でエネルギーを利用できます。しかし電気エネルギーの大規模貯蔵は難しく、エネルギーを有効に利用するためには上手に貯める技術が必要です。電気を貯める装置の一つに蓄電池があります。リチウムイオン電池は製品化から僅か20数年で、ほとんどのノートパソコンやスマートフォンに搭載されている画期的な二次電池です。電気自動車のエネルギー供給源として大きな期待が寄せられ、ノーベル賞候補の技術です。電気を貯めるメカニズムは電気エネルギーの化学エネルギーへの変換です。研究室では、エコマテリアルを使って、安全で、希少資源に頼らない蓄電池を目指して研究を続けています。一方、生物のエネルギー変換が注目されるようになり、そのエネルギー変換のメカニズムが明らかになってきました。未来のエネルギー変換は昆虫のような小さな生物のエネルギー変換に学ぶことになるかもしれません。
 「環境」という言葉には、自然界との結びつきから美しい響きを感じる学生も多くなったと感じます。しかし環境の語源は「囲い込み」、「外界との区別」など、今となっては想像もつかない意味が含まれています。これからのエネルギー技術は、領域や分野の壁を超えた環境技術として発展してゆくことを願っています。