「分子」をつかって「環境」を科学します

環境工学科 
准教授 平郡 諭

平郡 諭
2018.04.23
  • 図1:灰色のボールの様な物は炭素が60個集まって形成されたフラーレンC60分子。C60結晶格子の中には2種類の隙間(赤と青の球)が存在し、様々な物質を添加することができる。

    図1:灰色のボールの様な物は炭素が60個集まって形成されたフラーレンC60分子。C60結晶格子の中には2種類の隙間(赤と青の球)が存在し、様々な物質を添加することができる。

  • 図2:湾曲した有機半導体。分子はカタチそのものが面白い。(注)一部分子を取り除き、分かり易くしています。

    図2:湾曲した有機半導体。分子はカタチそのものが面白い。(注)一部分子を取り除き、分かり易くしています。

分子の秘めたるチカラ?!
 私は分子性物質の環境工学応用を目的に研究しています。分子性物質はその柔軟性や環境と人間に優しい性質から先端材料として注目を集めている材料です。
 複数の原子から分子が形成され、その分子が一つの単位となって凝集し固体となったものを分子性固体と呼びます。通常の固体の性質は、多くの場合その物質を構成する元素の種類によって決まります。その為、ねらいの性質や機能を発現させる為には元素周期表の中から最適と思われる元素を選び出すことが新しい物質を設計する第一歩と言えます。一方分子性固体では、構成要素を原子と捉えるのではなく、分子の集団から成る特異な集合体を基本的な構造として考えます。新しい分子性物質を設計する際は、無数にある分子から目的に合った形や大きさのものを選び出すことから始まります。さまざまな形や大きさを持った分子から成る分子性物質は、一般的にその結晶のサイズも大きくなり、その為に結晶中に大きな隙間ができます。物質合成の一つの手法として、この空間に様々な物質を添加することで新たな機能を発現させることができます。また、添加する物質の量や種類・組み合わせに依ってその特性を制御することが可能です。歴史的に有名な事例では、鉛筆の芯などに使われる黒鉛(グラファイト)に別の元素を添加することにより黒鉛が金色に変化して金属になったり、磁石にしたりすること、が挙げられます。携帯電話等に使われているリチウムイオン二次電池もこの原理を利用しています。
 私の場合、特に軽元素から成る分子性物資に興味を持っています。主に炭素が関連する化合物の分野は「クロモノ科学」と呼ばれており、黒鉛の色が黒いことと、その物性の制御が非常に困難で複雑であること、からその名「クロモノ」が付けられています。決して腹黒い人が行う研究の意ではありません。まさに私の得意?!とする分野がそのクロモノ科学です。業界ではクロモノと言われ少しマニアックな分野ですが、その縁もあって海外の研究者と共同研究をさせていただく機会を数多く与えられ、フラーレン(炭素が60個集まってサッカーボール状になった分子、図1)や低分子有機半導体(図2)を用いた研究を進めて来ました。

面白くて辛い分子環境科学
 研究をしていて面白いことは、自分の設計通りの物質の作製に成功し、ねらい通りの性質が現れた時、また反対にヘンテコな実験データが測定された時です。なぜヘンテコな現象が観測されて面白いかと言うと、これにこそ新しい発見が隠されている可能性があるからです!マニアックな発想です。今後も分子をつかって電気や熱を有効に活用し、持続可能な社会・環境を目指した研究を進めたいと考えています。


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