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「水害の特徴を知り、しなやかに減災するために」

都市デザイン工学科 
准教授 東 良慶

東 良慶
2018.08.30
  • 波消しブロックの被災調査(新潟海岸)

    波消しブロックの被災調査(新潟海岸)

  • 2016年熊本地震による被災地の現地調査(地盤探査)のようす

    2016年熊本地震による被災地の現地調査(地盤探査)のようす

  • しなやかな津波対策(流起式可動防波堤)の開発

    しなやかな津波対策(流起式可動防波堤)の開発

 人口、資産、社会資本が集中する都市域は主に沖積平野や河口沿岸域に形成されています。例えば大阪平野、関東平野や濃尾平野が挙げられます。こういった都市域において、豊かな生態系や自然環境と共存するためには、河川域や海岸域と上手く付き合う必要があります。このような水際域は日頃は水環境とのふれあいの場となりますが、洪水や津波などにより災害が発生しやすい場所でもあります。
洪水や津波などの水害は繰り返し生じてきた歴史があり、発生メカニズムやその要因は地域的に特性(特徴)があると考えることができます。防災水工学研究室では土地の成り立ちから水害の特性を読み解き、環境と調和した被害軽減(減災)の方法を考究しています。そのために、水理学(流体力学)および地形環境学の緊密な融合研究を現地調査(図1)や室内実験を通じて推進しています。
 本研究室の研究テーマのうち2つ紹介します。
「土地の成り立ちをふまえた水害対策の立案」…近年、超過洪水による氾濫浸水災害が激甚化しています。しかしながら、地域の水害特性は歴史的にあまり変化がないと考えられます。この特性を読み解く鍵となるのは、地表付近に残る水害地形(自然堤防、破堤地形や旧河道など)です。最新の物理探査手法を用いて、これらの地形の物性(硬軟、粗細)を明らかにします(図2)。これにより、水害時の浸水リスクおよび地震時の液状化リスクを評価する方法を立案し、被害軽減(減災)プランへの適用を目指します。
「流起式可動防波堤の開発」…地震・津波災害の発生時には陸上輸送網の混乱が予想され、早期復旧のための人員・物資輸送の要となるのは港湾施設からの海上輸送となります。通常、港湾施設は防波堤によって守られていますが、開口部が設けられ船舶が自由に航行しています。災害発生時はこの開口部から津波が来襲し、施設機能に被害を及ぼします。よって、津波来襲時のみこの開口部を塞ぐ可動式防波堤が必要となります。本研究室では学外機関と共同研究会を組織し、自然(津波)の力のみで起立し、人の判断(操作)が必要のない、流起式可動防波堤を開発しています(図3)。現在は実大規模の実験を実施し、現場設置に向けた詳細な検討を行っており、実用化段階に入っています。