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なんでも溶かす、自分で作る

機械工学科 
教授 山浦 真一

山浦 真一
2023.02.13
  • 図1:アーク放電による溶解

    図1:アーク放電による溶解

  • 図2:アーク放電の原理

    図2:アーク放電の原理

 機械工学の主要な分野の一つに“機械材料”があります。機械構造物が壊れずにその性能を発揮するためには、設計者は材料の破壊強度をはじめ、塑性変形能、疲労強度など様々な力学的特性をよく知る必要があります。

 また、用途によっては力学的特性だけでなく、多くの有用な機能特性が材料に求められます。例えば、我々の暮らしを支える「電池」も、実は巧妙に考え抜かれた材料の組み合わせです。スマートフォンには、リチウムイオン電池が使用されているでしょう。では、何故リチウムなのでしょうか?答えは簡単です。リチウムイオン電池はリチウムの「金属の中で一番イオン化傾向が大きい」という特徴を最大限に利用して作られているのです。金属材料の機能性としては、他にも電気伝導性、磁気特性、電気化学特性、耐食性などが挙げられます。

 私たちの研究室では、特に水素エネルギー利用分野での使用が期待されている水素分離・精製用金属合金や次世代金属とされる高エントロピー合金、特殊な原子配列を持つアモルファス合金などのいろいろな新型金属材料の機能特性を調べています。
 卒業研究では、種々の金属素材を配合し、アーク熔解炉を用いて学生さんが自分で溶かして合金試料を作ります。
 図1は金属をアーク放電で溶解している一例です。アーク熔解では、アーク放電と呼ばれる電極間の強力な放電現象を用います(図2)。直接見ることのできない強い光ですので、遮光ガラスを通して撮影しています。アーク放電は6000℃もの高温に達しますので、大抵の金属を熔解することが出来ます。この装置を用いて、様々な配合比率で各種金属素材を混ぜて溶かした合金を作ります。
 私たちの研究室では、配合比率を種々に変えた様々な合金を作り、その特性を系統的に調べ、世の中に役に立つ新しい金属材料を探して、日々研究を行っています。

 機動戦士ガンダムの装甲材・ガンダリウム合金や宇宙戦艦ヤマトの装甲材・硬化テクタイトは、今は空想上の超高強度材料ですが、将来、皆さんが開発するのかも知れません。


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