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エンジニアリングプラクティスT,UHEADLINE

 「エンジニアリング・プラクティスT, U」は,発展コースの目玉授業の一つでその3年次生の必修授業として組み込まれています.実際の産業界で機械工学技術者として活躍できる能力を養うための創造的総合演習科目(PBL授業)です.習得すべき能力は「社会人基礎力」(後述)としてまとめられています.具体的には,現在の産業界で製品開発・製造時に行われているような起案,構想,設計,作図,加工,組立,試運転,評価といった一連の流れを全て体験し,優れた能力を有する技術者能力の育成を目指すものです.事前に7種類の課題が用意されており,班分けの5〜6名からなるグループで1つの課題に取り組み,最後は競技会およびその他の方法で製作した作品の優劣を競います.

 課題は毎年少し変更され,設計上の制約条件,競技ルールなども変わっていきます.また各班の使用できる予算の上限も決めています.2012, 2013年度の課題は以下の通りでした.
(1)電気自動車(エコカ−)(3班割り当て) 担当教員:中川,田原,上辻
 環境に優しい充電可能な電池をエネルギー源とする電気自動車の設計,製作を通して,自動車の基本的な構造,特にシャーシ,ステアリング,ブレーキ,動力伝達機構の仕組みを理解するとともに,軽量化と剛性・強度の両立,エネルギー収支などのエコカーに必須の条件を学びます.
(2)外来植物駆除装置(2班割り当て) 担当教員:西川,上田
 淀川にはウォーターレタス,アゾラクリスタータ,ナガエツルノゲイトウなどの特定外来植物が群生し,環境問題などを引き起こしています.その外来植物の1種であるアゾラクリスタータを効率よく回収するマシンを製作します.アゾラは小さな浮き草であり,その回収方法に工夫を凝らす必要があります.マシンはラジコンにより遠隔操作できるようにします.
(3)縦軸風車(3班割り当て) 担当教員:川田,山本
 地球温暖化の観点からCO2排出量がゼロの環境に優しい発電方式として風力発電が注目されてきましたが,原子力発電所の事故により更に期待が高まっています.本課題では最も効率的な縦軸の風力発電システムを目指して開発を行なうものとします.
(4)ホバークラフト(3班割り当て) 担当教員:小池,川田,加藤
 淀川の環境監視を目的としてホバークラフトを設計製作します.まず教科書と昨年の作品を参考に浮上用の動力源のパワーと浮上力の関係を考察します.浮上用の動力源は支給します.
(5)2ストロークエンジンバイク(2班割り当て) 担当教員:桑原,吉田,塩田
 2ストロークエンジンを自作します.このエンジンをミニチュアバイクに搭載し,バイクの走行性能を競います.この取り組みによってエンジンの構造や動作原理を理解します.エンジンの設計・製作のためには機械工学のあらゆる知識を総動員しなければなりません.これまでに修得した専門科目をいかにものづくりに応用できるか?を問うチャレンジです.
(6)ゴミ収集ロボットの製作(2班割り当て) 担当教員:村岡,牛田
 リサイクル可能なゴミを収集するロボットを製作します.ゴミ収集ロボットが備えるべき要素技術を実現するために,ゴミの探索や分別を行う機能(第1班),ゴミを収集・搬送する機能(第2班)をもつロボットを各班で完成させます.それぞれの目的に応じてロボットのメカニズムに創意工夫をこらし,ロボットの強度と軽量化を同時に実現するための設計方法を,ロボットの製作を通じて学びます.
(7)スチール缶分離マシン(2班割り当て) 担当教員:羽賀,井原
 スチール缶と呼ばれているビールなどの飲料缶は,実はスチールとアルミニウム合金から作製されています.蓋部分がアルミニウム合金である理由は,飲み口を開けやすくするためです.回収したスチール缶のスクラップは,スチールとアルミニウム合金に分別することが理想ですが,コストの面で成り立たないので実施されていません.家庭や飲食店で分別することができれば,アルミニウム合金のリサイクルが進みます.蛇足ですが,スチールにアルミニウム合金が混入しても害にはなりません.しかし,アルミニウム合金にスチールが混入すると害になります.そこで,安価でコンパクト・軽量な分離機械が必要になります.

 上記の7課題に,学生たちが1年間をかけて挑みます.正規の授業時間は毎週火曜日の午前中2コマ(90分授業(1コマ)×2)ですが,とても間に合いません.スケジュール通り順調にいくことはほとんどなく,各班は授業時間外に積極的に集まり,議論を重ね作業分担を決め進んでいきます.製図指導の先生方の厳しいチェック,工作・加工においては「ものづくりセンター」専門技師の皆さんのご指導,チェックを頂き,少しずつ“まともな”(?),“良識ある”(?)機械工学エンジニアに成長していきます.

 以下に,これまでの学生の努力と感動のドラマを紹介します.

 上左の写真は4月授業開始時にそれぞれの課題の説明を受けているところです.みな真剣に聞いています.どれを選ぼうか???上右の写真は5月上旬,中間報告会の模様です.電気自動車担当3班が合同で,進捗状況をプレゼンしました(みな緊張気味!).それぞれの班で電気自動車開発のコンセプトが違います.非常にユニークな班もあり,学生間で長時間,討論が行われました.


 上記写真は2012年末のホバークラフト競技会の模様です.班メンバーの期待を一身に背負い,ドライバーは制作したホバークラフトを操縦しました.結構,カーブを曲がるのが難しい!


 2012年末,電気自動車担当の3つの班が集合し競技会を開催しました.上左の写真はそれぞれの班が作った電気自動車の雄姿です.上中央の写真は,競技会真っ只中!今にも止まりそう,心配しながら皆で応援しました.上右は,競技会を終え,みな晴れ晴れとした気持ちで集合写真.一番左はこの班ご担当のエンジニアリング・プラクティス世話役の上辻靖智先生です.


 2008年度には上記写真のゴルフマシーンの設計製作もありました.実はこのマシーンが最も飛距離が出ました.


「社会人基礎力」とは?
 経済産業省にて提唱されている「社会人基礎力」は,これから企業に就職して仕事を行う上で必須の能力とされている重要なものです.「エンジニアリングプラクティス」を受講した学生は,就職活動を行うときなどにエンプラを通じてこれらの能力を習得していることを大いにPRできるでしょう.社会人基礎力は以下に示すように,「前に踏み出す力」,「考え抜く力」,「チームワーク力」の3つであり,それぞれ3〜6項目の具体的能力として定義されています.

Action 〜前に踏み出す力〜
主体性:失敗を恐れず,自ら物事に進んで取り組むことができるか
働きかけ力:他人に働きかけ,巻き込むことができるか
実行力:困難な事にも粘り強く取り組み,目的に向かって最後まで行動することができるか

Thinking 〜考え抜く力〜
課題発見力:現状を分析し,目的や課題を明らかにすることができるか
計画力:課題の解決に向けたプロセスを明らかにし,準備することができるか
創造力:成果を生み出すために,新しいアイデアや技術等を生み出すことができるか

Team Work 〜チームで働く力〜
発信力:自分の意見を分かり易く伝えることができるか
傾聴力:相手の意見を丁寧に聴くことができるか
柔軟性:意見の違いや立場の違いを柔軟に理解することができるか
情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解し,適切に行動することができるか
規律性:挨拶をすることや,社会のルールや人との約束を守ることができるか
ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対して効果的に対応することができるか

さらに,「専門知識」も下記の通り重要な能力として向上に努めています.

Technical Knowledge 〜専門知識〜
知識活用:成果を生み出すために,大学で学んだ一般教養や専門知識を数多く活用できたか
知識習得:成果を生み出すために,新たに一般教養や専門知識をどれだけ多く学んだか
理解度:活動の成果や,活用した専門知識等について,第3者に分かり易く伝えることができたか


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