宇宙推進工学研究室<Advanced Rocket Lab.>



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    電気推進ロケットエンジンの性能
     HUAロケットなどに代表される化学ロケットでは推進剤自身の化学反応で発生する熱エネルギーを運動エネルギー
    に変換し推力を発生させる。このシステムでは大きな推力を発生させることができるが、比推力(推進剤単位重量当
    たりに得られる推力)が小さくミッション達成のために大量の推進剤が必要である。すなわち燃費が悪い。宇宙空間
    で使用されるロケットの場合、正確な推力制御が可能であり燃費が良い推進方式が望まれるので、化学ロケットに変
    わって電気推進ロケット(電気推進機)の活躍が期待される。
     当面の電気推進機は太陽電池により太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換し、これを推進エネルギーに利用す
    るロケットである。化学ロケットに比べて、推進剤噴出速度が格段に大きいので、推進剤の使用量を節約でき荷重量
    を増やすことができる。すなわち、高比推力、低加速度であるという特徴を持つ。そのため、重力の影響の弱い宇宙
    空間での長期のミッションに適しており、宇宙飛翔体の軌道遷移、保持、姿勢制御への利用、深宇宙探査の主推進機
    として期待されている。
     電気推進機では放電を利用して電力を推進剤に投入しその放電プラズマを加速するので、それら過程の十分な理解
    が推進性能の高いロケットの開発のためには必要である。ロケットの性能を評価する重要なパラメータ、比推力Isp
    次式で与えられ、時間の次元を持つ。

              Isp=T/mg=U/g      (1)

     ここで、T(=mU(宇宙航行用推進機の場合、ロケットのガス噴出口の圧力と外部の雰囲気圧力の差に起因する推力
    は無視できる))は推力、mは推進剤質量流量、gは標準重力加速度、Uは推進剤噴出速度である。gは約10m/s2なので、
    比推力(sec)を10倍すればほぼ推進剤噴出速度になる。また、電気推進機の場合、推進エネルギーと投入電力の比か
    ら推進効率ηが次式のように定義される。

              η=mU22P=gIspT/2P   (2)

     ここで、Pは投入電力である。上式より宇宙飛翔体から供給される電力と推進効率が一定の場合、比推力と推力は反
    比例の関係にあることがわかる。電気推進機は加速機構の違いにより、
    (1)電熱型(直流アークジェット推進機)
    (2)電磁加速型(パルスプラズマ推進機、電磁プラズマ推進機)
    (3)静電加速型(イオン推進機、ホール推進機)
    に分類され、それぞれカバーできる比推力・推力領域が異なる。化学ロケットの場合、推進剤を多量に排出するため
    推力(推力密度)は大きいが、比推力は100〜300秒程度である。一方、電気推進機の比推力は表1に示すように500〜
    104秒であり、化学ロケットに比べてかなり高い。
    表1 各種電気推進機の動作範囲
     宇宙用機器が地上の機器と異なる点は、一度宇宙におかれるとメンテナンスはほとんどできず、長期間(ミッショ
    ンによっては10年から半永久に)、過酷な環境(低温・高温の熱サイクル、高真空、宇宙からの高エネルギー放射線
    ・プラズマ照射など)の中で所定の性能を発揮しなければならないところにある。電気推進機の場合も同様であり、
    数百時間から数万時間の安定作動が望まれ、さらに軽量、かつ簡単なシステム構造が要求され、本質的に水冷はでき
    ない。また、供給される電力も必ずしも十分ではないので電気エネルギーから推進エネルギーへの変換効率、すなわ
    ち推進効率はできる限り高くなければならない。以上のように、電気推進機の開発指針は地上の同じ加速原理のプラ
    ズマ/イオン加速器のそれとは異なるところが多く、高い推進性能(要求される比推力、もしくは推力を満足し、さ
    らに高推進効率)、軽量かつ高耐久を第一に考えなければならないのである。





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