宇宙推進工学研究室<Advanced Rocket Lab.>



    目次 / 1 / 2-1 / 2-2 / 2-3 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 /
    
    
    
    Research of Magnetic layer type Hall Thruster
    (THT Series)


    (THT-W)
    1.About Hall Effect Thruster
     ホールスラスタに関する研究は、1960年代に旧ソビエト連邦とアメリカ合衆国でほぼ同時期に始まりました。
    しかし、その当時アメリカでのホールスラスタの研究はなかなか進展せず、70年代には打ち切られ効率の高いイ
    オンスラスタの研究に転換しました。一方、旧ソ連ではホールスラスタの研究が進められ、SPT(Stationary Pl
    asma Thruster)というタイプのホールスラスタが開発されました。 70年代には実際に衛星に搭載され、実機と
    しての使用にも成功しています。この他にも旧ソ連ではTAL(Thruster with Anode Layer)と呼ばれるタイプの
    スラスタも開発されました。旧ソ連で電気推進の開発が上手くいったのは、旧ソ連での化学推進のレベルが低く
    なかなか改善されなかったことが背景にあるとも言われています。欧米諸国(旧西側諸国)でのホールスラスタ
    の研究が盛んになり始めたのは、ソ連が崩壊した1991年以降です。ソ連崩壊によってその科学技術が広く知れる
    ようになり、ホールスラスタの性能の高さに注目が集められました。現在、アメリカ・フランス・イスラエルな
    どで研究が行われており、日本でも東京大学や名古屋大学で研究がなされています。
    A.I.Morozov  ホールスラスタは円環状の“加速チャネル”という部分を持ち、そこ
    には電場と磁場が印加されています。加速チャネル内で生成されたプラ
    ズマからイオンのみが“静電的に”加速・噴出され、推力を得る機構を
    とっています。また、推進剤の加速が準中性のプラズマ状態で行われる
    ため、空間電荷制限電流則に従わず、イオンスラスタより高い推力密度
    が得られるという利点があります。
     ちなみに、写真の少し太めの男性は、ホールスラスタの発展に大きく
    貢献したロシアのモロゾフ教授で、僕らは “ホールスラスタの父” と
    呼んでいます(ホールスラスタの世界で一般的にそう言われているかは
    定かではありませんが・・・。

    2.Principle of Operation
    
    Principle of Operation
    
     ホールスラスタの作動原理について説明します。ホールスラスタは
    円環状の加速チャネル部を持ち、そこに軸方向の電場と径方向の磁場
    が印加されています。チャネル出口近くに取り付けられた陰極(Cath
    ode) から放出された電子は、チャネル内に流入し電場と磁場の相互
    作用によって加速チャネル内に閉じ込められます。電子は加速チャネ
    ル内を円周方向にグルグルと回るのですが、それによって生じる円周
    方向の電流を“ホール電流”と呼びます。ホールスラスタの名前の由
    来はこれなんですね。 その閉じ込められた電子と、陽極(Anode)か
    ら流入した推進剤(Propellant)が電離衝突しプラズマが生成されます。そのプラズマからイオンのみが軸方向
    の電場によって加速されその反作用で推力を得ているのです。このイオンの噴出速度はだいたい15000m/sとかな
    り高く、化学推進よりも高い比推力が得られる理由はここにあります。


    3.About THT Series Hall Thruster  本研究室では1997年から実験室モデルでのスラスタの作動実験が行われている。1998年までに2機の1kW級スラ
    スタ(THT-T、THT-U)が製作され、推進性能が調べられたが、他のホールスラスタと比較して、その性能は低
    かった。 1999年、THT-T、THT-Uにおける問題点を考慮し、加速チャネル壁材質と磁気回路に改良を加えたTHT
    -Vを製作。そしてこのスラスタにより、飛躍的な性能の向上が達成された。 また、2001年に製作されたTHT-W
    は、更なる性能向上のためにTHT-Vの磁気回路を改良し、比推力2010sec、推進効率45%が達成可能になった。
    2002年に、実機を想定して製作されたTHT-Xにおいては、比推力1800sec、推進効率55%を達成した。 これらの
    性能は、世界のホールスラスタの性能に比肩するもので、世界水準のホールスラスタの製作に成功したといえる。
    THT-V
    THT-W
    THT-X



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    Research of Magnetic layer type Hall Thruster

    (THT Series)


    (TALT-T)
    1.Introduction

     Anode LayerホールスラスタはロシアのA.V.Zharinovによって開発されました。SPTタイプと違い、加速チャン
    ネル壁に導体が用いられ、SPTタイプより加速チャネル長さが短いのが特徴です。 噴出イオンによる加速チャン
    ネル壁の侵食が抑えられるためSPTタイプより寿命が長く、また比較的性能が高いのが長所と言えます。 ただ、
    安定に作動する領域が狭いという欠点があります。“Anode Layer”とは、Anode近傍に形成される、電子のラー
    マ半径程度の厚さの、ポテンシャルがほぼ不連続に増加するシースの呼び名で、そこでイオンの生成と加速が主
    に行われています。そのため、Anode Layerタイプと呼ばれています。


    2.Principle of Operation

    Principle of Operation  Anode layer typeの作動原理について説明します。Magnetic la-
    yer typeと基本的には変わりません。円環状の加速チャネル部を持
    ち、そこに軸方向の電場と径方向の磁場が印加されています。チャ
    ネル出口近くに取り付けられた陰極 (Cathode)から放出された電
    子はチャネル内に流入し電場と磁場の相互作用によって加速チャネ
    ル内に閉じ込められ、その閉じ込められた電子と陽極 (Anode)か
    ら流入した推進剤(Propellant)が電離衝突しプラズマが生成され
    ます。そのプラズマからイオンのみが軸方向の電場によって加速さ
    れその反作用で推力を得ています。
     このタイプのスラスタは加速チャネル壁が導電体でできており、2次電子放出による冷却作用の効果が小さい
    ため電子温度は陰極から陽極に向かうにつれて増大します。このため陽極付近の狭い領域 (Anode layer)でプ
    ラズマポテンシャルが急激に上昇し、この薄い層でイオンの生成と加速が行われています。








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