宇宙推進工学研究室<Advanced Rocket Lab.>



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    MPDスラスタ
     電磁プラズマ推進機、いわゆる Magneto-Plasma-Dynamic(MPD)推進機は図1、2に示すように、通常の電熱型ア
    ークジェット推進機と同様の同軸型電極構造を持つが、電磁力を主加速力とするためその開発指針は異なる。すなわ
    ち、アークジェットでは推進剤ガスの解離、電離などの化学反応に消費されるエネルギー損失をできる限り抑え推進
    効率の向上を目指すが、 MPD推進機ではプラズマ生成のための電力消費は考慮せず、その回収も諦め、電磁力の仕事
    効率をとにかく高めることを目指す。電磁力を効果的に発生させるためには必然的にkAオーダーの大電流が必要であ
    る。大電流のアーク放電によって推進剤ガスを電離し、生成プラズマを電磁力によって加速する。アークジェット推
    進機とイオン推進機の中間性能をカバーし、推力密度が比較的大きく、その比推力は1000〜6000秒程度と広範囲で、
    推進効率は10〜50%程度である。電磁力主体の推進機なので本質的に推進剤ガス種を選ばない。しかし、通常は推進
    性能が良く、液体貯蔵が可能なN2H4、NH3が用いられる。
    図1 電磁プラズマ推進機の構造と加速原理
     日本では1995年にスペースフライヤーユニット(SFU)上で準定常パルス放電作動型MPD推進機(時間平均電力430W
    比推力1000秒、推力/電力比20mN/kW)の40000回以上の噴射が行われ(Electric Propulsion Experiment)、そのシ
    ステム性能が実証された。パルス作動では大電流放電にもかかわらず推進機本体の水冷は必要なくなる。しかしなが
    ら、大容量コンデンサへの充放電の繰り返しとなるので、必然的に推進機システム重量の増加というデメリットを伴
    う。 一方、定常作動型MPD推進機では主に数100A〜2kA程度のアーク放電を発生させるが、誘起電磁力が小さいので
    それを補うために軸方向の磁場が印加される。この時、アーク放電の最大の問題である電極損耗を軸方向磁場の印加
    によって大幅に低下させることが可能であり、パルス型推進機にも磁場印加の効果が期待されるようになった。最近
    では、発散状磁場とカスプ状磁場を組み合わせた複合磁場を印加し、推進性能の向上が図られている。
     大電力を必要とするMPD推進機の出番は現在のところまだ先になりそうである。しかしながら、有人火星探査などM
    PD推進機でなくては実現できないミッションもあり、コンパクトなパルス作動型推進機システムの開発、定常作動型
    推進機の耐久性の向上など技術上のブレークスルーが今後必要である。
    (a) 耐久試験用MPD推進機
    (b) プラズマ噴射状態(流れは右から左へ, ピーク電力:1.2MW,推進剤:アンモニア)
    図2 大阪工業大学における耐久試験用のMPD推進機の外観と作動状態





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