ホール型イオンロケット流を用いた導電性テザーの性能予測

担当メンバー:
 田原 弘一(Hirokazu Tahara)

キーワード:
 テザー(ひも)
 導電性テザー
 ベアテザー
 宇宙推進
 宇宙発電
 地球磁場
 プラズマ流
 静電探針法
 
   
    (提供: NASA)

研究内容紹介:

エレクトロダイナミックテザーシステムは、導電性のワイヤを地球磁場の下で移動させることで発生するローレンツ力を利用したシステムである。このワイヤのことをテザー(Tether:ひも)と呼び、テザーにより繋がれた衛星全体をテザーシステムと呼ぶ。プラズマで満たされた宇宙空間において導電性のテザーで衛星同士を繋ぎ、地球磁場を横切るように周回させる。この時テザー衛星の速度vと地球磁場Bにより電場(v x B)がテザーに発生し、長さLのテザーを有する衛星間に電位差(v x BL)が生じる。テザー衛星周辺の宇宙プラズマの存在により、プラズマを介した電流経路ができ、テザーに電流が流れ続ける。また逆にテザー自身に電流Iを流したとき、長さLのテザーにローレンツ力(I x BL) を発生させることもできる。これらの現象を利用して衛星の発電機や低燃料宇宙推進機として利用することが考えられている。テザーによる電磁力学的推進は、 通常の推進剤を必要としないので上段ロケットの重量を大きく減少させることができ、再使用型の宇宙機のコスト削減に効果がある。

エ レクトロダイナミックテザーの作動には、テザーと宇宙プラズマ層との間に電気的閉回路が構成される必要がある。宇宙プラズマとの接触の方法は、テザー先端 の導電性電極球で行う方法、ホロー陰極などの電子源を用いて電子を放出する方法など、様々な方法が検討されているが、近年有効な手段として考えられている のが、表面を絶縁物で覆わない導電性の細いテザー自身で宇宙プラズマ層から電流を捕集するベアテザー(Bare-Tether)である。この方法の利点として電極球テザーと比較してより大きな電流が捕集できることや、装置が簡略・低コストですむこと、周辺のプラズマ密度の変化に関わらず常に一定の電流量が流れるなどが挙げられる。

宇 宙プラズマからの電流捕集は磁場の効果や、プラズマの状態、宇宙構造物の帯電、テザーの形状などが相互的に作用していると言われている。ベアテザーによる 電流捕集では粒子軌道理論が適用できる。粒子軌道理論とはいわゆる厚いシース理論のことで、この理論により静止プラズマ中に置いた正の高電位を持った球も しくは円筒型の電極が空間から得ることのできる最大の電流量である軌道運動制限則(Orbit Motion LimitedOML)電流が導かれる。その理論式は電子のエネルギー保存式と角速度保存式のみで導かれる。

しかしこの電流理論は無衝突で静止状態にある等方的なプラズマから得られる電流である。実際の地球磁力下で動くベアテザーは宇宙プラズマ層と相対速度をもっており、テザーによる電流捕集現象は上記に示したこれまでのOML電流理論とは異なったものになると考えられる。

そ こで本研究グループでは、ベアテザーに関する地上シミュレーション実験を行い、ベアテザーを模擬したテザーサンプルに対して照射するプラズマ流速を変化さ せたときサンプル捕集電流がどのような影響を受けるのかを調べている。また周辺磁場の影響も同時に検討している。高速プラズマ源にはホール型プラズマ加速 器(ホールスラスタの応用)を用いる。