イノベーションを生み出す 共創・共感のデザイン思考 NEDO特別講座 ロボットサービス・ビジネススクール 学校法人常翔学園 大阪工業大学
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 プロトタイピングの種類は、目的によっていろいろあります。最初は、クリティカルプロトタイピングといい、重要なところをモックアップで作ってみて議論します。例えば、車のドアの構造が重要なら、ドアの部分だけを作ってみる、あるいは照明だけを作ってみる。そういう、特定の部分を議論するためのプロトタイプです。次に、ダークホースプロトタイプがあります。ME310では、必ずこれを行います。自分たちが、本流で議論している流れに対して、全く違う、とんでもないやり方を、必ず残して議論します。過去の例では、有力なアイデアが結果的に棄却され、ダークホースで残していた例が生きたということがあります。ファンキープロトタイプは、とりあえず全体をまとめたというものです。ファンクショナルプロトタイプは、全部が一応、動作するもの。このような流れで、段階的にプロトタイピングを行います。 毎年夏休み中に、国際PBLのプログラムを行っています。海外の協定大学とともに、学生たちがプロジェクトに取り組みます。テーマとして農作業ロボットを考えて見ます。日本は小規模農家が多く、高齢化しています。そういう人たちは、大型のトラクターを購入するだけの力がない。しかし、高齢化で、何かのサポートが必要です。従って、小型で安価な農機具ロボットで、できるだけ多くの目的に使える、例えば、耕す、水やりをする、草を刈る、収穫する。そういったところで、サポートするロボットを作れないかということで、学生たちは、日本の農家に行ってインタビューをし、実際にどんな器具を使っているのかを見せてもらい、課題は何かというのをサーベイしました。同時に、企業がどんな商品を作っているのかを学びました。工場も見学しました。 課題分析では、低い所、高い所、中腰、いろんな作業の仕方があることなどを調査し、ペルソナ作成では、典型的な課題の農作業者の生活ストーリーを作成しました。それに基づいたデザインプロポーザルを行い、キャタピラーが二つあり、その間の距離が変えられるというデザインで、畝をまたがって走るとか、畝の1本を走るといった作業の変化に対応できる構造を考えました。高さや幅も変えることができます。最終的に、そういうコンセプトを全部まとめ上げたポスターを作成し、最終報告会を開催して終了しました。 これとは別に、実際のメカを作りました。ファンクショナルなものを、まず初めは段ボールから作っていって、イメージを固めて、クローラーを入手して、実際に作っていきました。期間が2カ月しかなかったので、精一杯でここまでですが、実際に自走して、かつ、農夫をカメラで追尾する、農作業者が動いたら付いてくるという機能などを開発しました。16●プロトタイピングの種類●台北科技大学とのプロジェクト事例(国際PBLプログラム)

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