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研究内容
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本研究室では、高電圧およびパルスパワーを利用した研究を行っています。 パルスパワーとは、電磁エネルギーを時間的・空間的に圧縮して得られる電力のことを指します。例えば、研究室では独自の回路を用いて、15 kWの電力を0.2マイクロ秒間だけ出力させることができ、それを1秒間に1500回繰り返すことが可能です。こうして得られた電力を利用してプラズマを発生させ、そのプラズマから生じる化学種や紫外線を応用し、社会に役立つ研究を進めています。以下に最近の研究テーマを紹介します。 @電気で水をきれいにする ― パルスプラズマによる環境浄化 窒素と酸素の混合ガス中で発生させたパルスプラズマを利用し、通常の方法では分解できない水中の汚染物質を分解する研究を行っています。研究室独自の高電圧回路により、1秒間に約1500回の高頻度放電を実現(1回の放電の瞬間電力は15 kW。ただし0.2マイクロ秒のみ)。これにより、薬剤を使わずに水を浄化する新しい環境技術の可能性が見えてきました。 A電気で燃料の未来をつくる ― プラズマ触媒によるバイオマス変換 木や草などの非食用バイオマスに含まれるセルロースをプラズマで作った固体酸触媒を用いて分解し、燃料の原料となるグルコース(ブドウ糖)を生み出しています。このグルコースを発酵することでバイオ燃料であるバイオエタノールを作ることができます。プラズマ条件の最適化により、電気の力で資源を生み出すことを目指しています。 本研究は第2世代バイオエタノールに位置づけられます(第1世代はトウモロコシなど食用植物由来)。食用ではない植物(ワラ・木くずなど)から燃料を生み出すことで、地球温暖化対策や廃棄物削減に貢献する次世代クリーンエネルギーとなります。 B電気で肥料をつくる ― プラズマによる持続可能な窒素固定 世界の農業を支える窒素肥料の多くは、膨大なエネルギーとCO2を排出するハーバー・ボッシュ法で生産されています。私たちは、水面上でパルスプラズマを発生させ、空気中の窒素を硝酸(HNO3)として水に取り込む手法を探究しています。化学プラントを使わず、電気だけで肥料をつくる新技術を目指しています。 その他の研究 上記テーマとは別に、過去には「直流コロナ放電を用いた水処理」に取り組んでおり、その成果はYouTube動画(5分30秒)でご覧いただけます。 また、本研究室のいくつかの研究は科学研究補助金の助成を受けています。詳細は以下のリンクをご参照ください。 2025-27年度:窒素−酸素混合ガス中で発生させたパルスプラズマによるスルホン化炭素触媒の製造 2021-23年度:コロナ放電を用いた液中への革新的活性酸素種供給法の開発 2018-20年度:水上直流コロナ放電によって液中に供給された活性酸素種の化学反応解析 2015-17年度:HO2ラジカルの計測と液中化学プロセスへの応用 2008-09年度:薄板電極を用いた水上パルス放電による水中難分解性物質の高効率処理 Keyword:高電圧,パルスパワー,絶縁破壊,環境浄化(水質改善),バイオマス変換,窒素固定,活性酸素種 最新の研究情報はこちら TOPページへ戻る
この研究室では,静電気の力を操る技術,放電プラズマをコントロールする技術を基礎として,主に次のような応用研究を行っています. (1)排気ガスや大気中の有害微粒子を捕集・分解する技術 大気中には微細な微粒子が漂っています.その中でもサイズが小さいPM2.5(直径が2.5μm以下)やultrafine particle(直径0.1μm以下)と呼ばれるものは,肺の奥深くまで届くため,特に人体に有害だとされています.そのような微粒子は人間がものを燃やすことから生じることが多いのですが,世界中には大気中の濃度が環境基準を大幅に上回る地域が多数存在し,解決する必要があります. この研究室では,微細粒子の中でも特に有害なススをエンジンの排気ガスや大気中から取り除くことを考えています.まず,静電気の力でガラス表面にススを集積させ(ということは,空気は逆にきれいになります),次にガラス表面に沿って発生させたプラズマにより分解する技術を研究しています.細長い電極によりススを引き付ける静電気力が生じるように独自の工夫がしてあります.また,ウィルスも微粒子の一種であることから,現在,その除去や無害化の研究も始めています.
(2)微小な物体を自在に操る技術 電気を使って物体を動かしたい場合,まず思い浮かべるのは電気モーターだと思います.普通の電気モーターは電流と磁界の作用により生じる力(=電磁力)を利用していますが,この力は,物体サイズが小さくなると急速に小さくなります.一方,静電気力は物体サイズが小さくなってもそれ程小さくなりません.つまり,微小サイズの世界で物体を操作するときは,静電気力を上手く使うのが良いわけです. この研究室では,電極の形を工夫して,狙った場所にだけに高い電界を作り出すことで,微小な物体を駆動する技術を研究しています.この技術が発展すれば,微細なプラスチック片を色や材質で正確に分別して高品質な再生プラスチックを作るなど,様々な応用を考えることができます.写真は最も基本的な動作として,小さな球を左から右に移動させた例です.
少し異なる研究テーマでも対応可能ですのでご相談ください.業績等は以下のリンクを参照ください. Researchmap Keyword:静電気力,誘電泳動力,低温プラズマ,コロナ放電,誘電体バリア放電,微粒子,PM2.5,PM0.1,排ガス浄化,大気浄化,ウィルス,マニピュレーション 最新の研究情報はこちら TOPページへ戻る
本研究室では,プラズマの物性調査と調査に基づく技術応用として,次のような実験を行っています. (1) 大気圧誘電体バリア放電プラズマが誘起する流れ場の観測 大気中で1対の金属電極の表面に誘電体を置き,電極間に高周波(約10kHz,振幅数kV)を印加すると誘電体表面に沿って持続可能な放電が起きプラズマが生成されます.この放電形式を誘電体バリア放電といいますが,真空装置を必要とせず,電圧源さえあればどこででも作ることができるプラズマです.このプラズマをアクチュエータとして使用すると,プラズマ近傍に流れが生み出されることが知られており,これを利用した流体制御技術が発展しています.
流体がどのように流れているかを知るにはいくつか方法があり,流体の中で小さな微粒子がどのように動くかを見るのがその1つです(PIV法).直径数ミクロンの粒子が充満した箱の中でプラズマを点火すると,粒子が動くのが観測されました(図左).この粒子はプラズマが生み出した流れに沿って動くと同時に,プラズマの作る電界あるいは外部から印加された磁界からの作用を受けていると考えられます.このような流れ場を観測し,プラズマの分布や物性(温度,密度など)を知ることで,微粒子の捕捉や表面改質といった応用につなげていきたいと思っています.
(2) プラズマを使用した種子の滅菌
毎日の食卓に上がる野菜は,畑で種子から育てられたものです.ホームセンターで売られているキュウリやニンジンなどの種子は,すでにきちんと滅菌されています.種子によって病原体が運ばれたり,発病したりするのを防ぐためです.滅菌作業に求められるのは,菌を除くことはもちろんですが,種子本来の生理は護ること,かつ人間にとって安全であること,という点です.有毒なガスや液体を使わない,人間や環境に優しい滅菌技術として有望なのがプラズマ滅菌技術です.プラズマ中に生成される化学的に活性な活性種が滅菌に有効とされていますが,その機序はまだ分かっていません.私たちの研究室では,誘電体バリア放電や低圧高周波放電プラズマを使用して,プラズマを照射するとなぜ滅菌できるのか,どのようなプラズマが必要なのか,を一つ一つ調べています.Keyword:プラズマ滅菌,誘電体バリア放電プラズマ,流れ場,微粒子,低圧高周波放電プラズマ 最新の研究情報はこちら | |||
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