![]() 生物は走行やジャンプなどダイナミックな運動を難なくこなし,固い道やぬかるみ,山道など様々な環境で適応的にその運動を選択します.また身体という限られた空間内で,驚くほど豊かな知覚が得られる頑健な機構を有しています.一方現在のロボットは,工場で見られるロボットのように緻密で正確な運動は得意ですが,生物のようなダイナミックかつ適応的な運動は苦手です.また高機能のセンサ技術は多々存在しますが,コンパクトで頑健なシステムはあまり提案されていません. このような問題を解決するために,私たちは電機システムと機械設計のバランスを考慮したロボットの身体設計を提案します.設計にあたり,私たちは生物を模擬した身体設計に着目しています.具体的には,人工筋を配する二脚・四脚ロボット,脊椎構造を有する体幹構造,コンピュータシミュレーションによる身体設計支援インタフェースの構築などを研究しています. 本研究室で扱う学問領域は電気・電子工学だけでなく,機械工学,力学,数学,また生理学や脳神経学など多岐にわたります.本研究室に配属される卒業研究生は,自主ゼミや輪講を通してこれらを一から学んでいきます. 現在の研究グループを紹介します.研究グループは研究の進捗状況,研究のトレンドにあわせて流動的に変わります. |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ロボットが動物のようにダイナミックな運動・・・例えば走る,跳ぶといった運動を獲得するための,ロボットの身体設計,制御設計を考えます.ヒトをはじめ動物は,整地不整地問わず様々な環境で安定した歩行や走行,跳躍が実現できています.特にヒトは体幹という運動を不安定にする要素(体幹のように重心を高くする要素があると,一般的に運動は不安定になります.ホウキを逆さまにして手の上でバランスをとったまま走るのと,ホウキと同じ重さの重りを手の上にのせて走るのとで,どちらが不安定か想像つきますよね?)を持ちながら,安定した歩行や走行を実現しています.このような運動は,現在のロボットでは実現できていません.我々はヒトと現在のロボットの身体構造の違い・・・特に体幹構造の違いに着目し,ヒトと同じような冗長かつ弾性を有する体幹機構が運動に及ぼす影響について観察と検証を行います. |
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![]() ![]() ![]() ![]() 制御の面を考えると,ロボットにやわらかさを持たせることは避けるべきです.しかし天井裏や瓦礫など狭いところに潜り込むには,やわらかさを持たせる必要があります.近年身体をゴムやシリコーンで構成したソフトロボットが提案されています.これらは柔軟性のある素材で構成されているため,障害物にぶつかっても自身の形状を柔軟に変えることで障害物や自身の破損を避けることができます.しかし障害物にぶつかり変形すると,反力が発生します.これまでのソフトロボットは空気を身体に送り込むことで身体の形状を変えて移動を試みてきましたが,障害物に接触するとこの反力のためにそこから先に進むことができません.私たちの研究では水をロボットに給排水することで,身体を変形させます.空気と異なるのは水は重量があるため,給水して身体が膨張すると同時に重さも変更できます.そこで障害物に接触して反力が発生した場合,後ろに滑っていかないよう特定の箇所に給水をして摩擦を発生させます.また前方に進みたいときは排水して,摩擦をゼロにします.これによって移動だけでなく,隙間に「自身を押しつけながら潜り込む」ことや「進みたい方向に進む」ことも可能となりました. |
![]() ![]() ![]() ![]() アリや鳥,鰯など小さい昆虫や動物の群れは誰かがリーダーとなって指示しているわけではありません.それぞれは自分でルールをもって動いています(自律分散的な行動). それにもかかわらず,群れとして一つの形状を保っており,目的地への移動や集合離散などをしています.これをロボットに応用すると,たとえば地震や火事などの被災地に小型のロボットを大量に投入して自律分散的に群れを作り,被害状況を測定するなどが期待できます.このような小型ロボットで研究をするにあたっての問題点は,小型故に電源の供給が難しいことです.市販のバッテリは大きすぎますし,超小型のバッテリはもちません.そこで本研究では非接触給電方式をとり,地面にコイルを敷き,磁界を発生させます.ロボットは地面から発生した磁界をロボット搭載のコイルで受け取り,電力とします.これによりロボットは長時間の駆動が可能となり,小さいロボットのダイナミクスを利用した群行動が観察できます. |
![]() ![]() ![]() ![]() ロボットは精密な動きは得意ですが,跳躍やジャンプのようなダイナミックな運動はヒトにはかないません.原因はいくつかありますが,一つはアクチュエータ(駆動源)の問題です.現在多くのロボットで使われている電動モータは重く,また関節に取り付けるとその関節は固くなってしまいます.そのため着地時に大きな衝撃が発生し,その衝撃により関節が破損してしまいます.また瞬発力が必要なため,大きな電力が必要となります.この研究では二つのアプローチで,ヒト並みの跳躍運動の獲得を目指します.一つはアクチュエータを電動モータでなく,柔軟性と瞬発力のある空気圧人工筋肉にすることです.これは人の筋肉と同様柔軟性があり,内部の圧力を変えることで柔らかさが変わります.着地時には衝撃を吸収し,そのエネルギを跳躍に再利用できることを目指しています.もう一つのアプローチは重量を減らすため,アクチュエータの数を究極まで減らすことです.我々は一つのアクチュエータで腰,膝,足首を駆動させ,跳躍できるための機構について議論しています. |
![]() ![]() 提案した機構や制御系の効果を確認する手段は二つあります.一つは実機を試作して,実世界でその挙動を観察,検証することです.もう一つはシミュレーション上でモデルを構築して,挙動を観察,検証することです.後者はパーツの加工が不要であり,また長さや重さなどを自在に変えることができます.また同じ条件で何度も実験できます(上記のジャンプロボットは,最適解を探すのに10万回以上の試行が必要でした.実機でやったら壊れますね...).しかしシミュレーション上でモデルを構築するには,シミュレーションソフトの使用に慣れる必要があったり,プログラミングのスキルが必要となります.そのため,「こういう関節の付け方したらどういう挙動するかな?」といった,ちょっとしたアイデアを試すにもかなりの時間がかかり,シミュレーションのせっかくの利点が活かされません.この研究ではシミュレーション空間上に直感的にモデルを構築できるようなインタフェースを考えています.皆さんもモノの大きさなどを説明するときに,両手を広げたりしますよね?直感的なインタフェースではこの方法をとって,ブロックの大きさや向きは両手の間隔と向きで決めます.最終的にはホワイトボード上でロボットの絵を描くように,シミュレーション空間上で思いついた形状を思いついたままに組み上げられるシステムの構築を目指します. |
■2022年度修士論文 - 腕と柔軟体幹を有する立脚モデルにおける腕振り運動と体幹関節弾性操作による床反力中心軌道の制御 - 導電性布製の柔軟センサを取り付けたソフトロボットハンドによる非接触物体位置推定 - 非接触給電により駆動する小型跳躍群ロボット誘導のための静的および動的な給電コイル配置 ■2022年度卒業論文 - 多肢を有する水駆動ソフトロボットにおける移動用四肢選定のための障害物形状推定 - 三股水駆動ソフトロボットのリモコン操作による移動能力の拡張 - 仮想空間上に示す電気回路のジェスチャによる電流電圧ダイナミクスの視覚的理解 - 個体差のある群ロボット編成による無制限環境下での群誘導 - Visual-SLAMを用いた簡易ヒト運動計測のための測定精度の検証 - 上半身を有する直立二脚ロボットの腕振りと柔軟体幹回旋がおよぼす歩行安定性への影響の計測 - 柔軟体幹と腕を有する直立二脚ロボットの体幹関節粘弾性の推定および腕振り運動時の体幹軌道の計測 - 弾性が広範囲に変更可能な体幹関節を有する四脚ロボットの弾性と速度の関係 - 柔軟体幹関節を有する四脚モデルにおける弾性が多様な歩容の速度に及ぼす影響の調査 - 動的な非接触給電による小型跳躍群ロボット誘導検証のための移動式フィールドの開発 ■2021年度卒業論文 - ソフトロボットにおける伸縮性のある導電性布の基本的性能の計測 - ヒト上半身を模擬したロボットにおける腕振りおよび体幹ねじりが床反力中心に及ぼす影響の計測 - 小型跳躍群ロボット制御のための非接触給電場の設計 - ワイヤレス給電群ロボットの移動制御のための給電方法の検討 - 柔軟体幹関節を有する四脚モデルにおける高速移動メカニズムの検証 - 柔軟体幹を有する二脚モデルの腕振りによる歩行の実現 ■2020年度修士論文 - 柔軟体幹を有する二脚ロボットにおける能動的な腕振り運動と歩行安定性についての考察(修士論文公聴会優秀賞) - 水駆動ソフトロボットの接触情報を利用した移動経路スキャニングの実現 ■2020年度卒業論文 - 柔軟体幹のひねりと腕振り運動が二脚歩行に及ぼす影響の実機検証 - 柔軟体幹と腕部を有する二脚ロボットにおける肘部屈伸運動の効果 - 複数のカメラによるVisual-SLAMを用いた人体運動計測 - 四脚ロボットの高速バウンス歩容における柔軟体幹関節の効果 - 導電性布を用いたソフトロボットのためのバイモーダルセンシング手法の検討 - 非接触給電により駆動する小型跳躍ロボットの開発と評価 - 筋ポンプのメカニズムを取り入れた柔軟な揚水機構の開発 - 小型群ロボットのための給電場の開発と局所的な給電頻度の制御 ■2019年度修士論文 - 四脚ロボットのダイナミックな歩容における体幹機構設計の検討 - 筋駆動脚ロボットにおける連続跳躍のための二関節筋配置の検証 ■2019年度卒業論文 - 非接触給電により駆動する超小型跳躍ロボットの自律分散的群行動の実現 - VRを用いた自己身体像逐次書き換えシステムの開発と評価 - マッキベン型人工筋駆動機構のための物理シミュレーション環境の構築 - 電気的特性を有する伸縮性材料を用いたセンサの開発と評価 - ワイヤを用いた多関節同時駆動脚機構による四脚歩行の実現と検証 - 柔軟体幹と腕振り機構を有する二脚ロボットの運動の検証 - 体幹関節を有する二脚ロボットモデルの運動解析 - 三肢を有する水駆動ソフトロボットによる局所的な摩擦を利用した運動性能の拡張 ■2018年度修士論文 - 柔軟体幹を有する二脚歩行ロボットにおける能動的な腕振りの効果 ■2018年度卒業論文 - 多肢を有する水駆動ロボットの移動能力の向上 - 腱駆動跳躍ロボットにおけるワイヤ経由点の幾何的決定法の実機検証 - 空気圧駆動二脚歩行ロボットにおける体幹と腕振り運動の効果 - 歩行補助器具を用いた歩行誘導刺激の検証 - ロック機構を有する空気圧人工筋駆動脚ロボットの蹴り出し運動の検証 - シミュレーションおよび解析のためのマッキベン型人工筋モデルの簡略化 - 導電性シリコーンによる多軸方向柔軟センサの開発と評価 - 水駆動ソフトロボットによる間接的センシングを用いた障害物の推定 ■2017年度卒業論文 - 筋駆動実ロボットによる安定した着地運動のための二関節筋配置の検討 - ソフトロボットのための導電性柔軟材料の計測と評価 - 単独アクチュエータで跳躍する腱駆動ロボットの運動解析 - 体幹及び腕を有する筋駆動実ロボットの運動計測 - 水圧駆動ソフトロボットによる質量分布操作を利用した移動の実現 - ソフトロボットのための導電性シリコンの開発 ■2016年度修士論文 - Pseudo-hapticsを用いた仮想空間における弾性機構の知覚 - 腱駆動跳躍ロボットにおける効率的なワイヤ経由点配置に関する研究 - ヒトを模擬した上体を有する二脚歩行ロボットにおける腕振り運動の効果(修士論文公聴会最優秀賞) - 粘弾性を有する体幹機構の起き上がり運動に及ぼす影響 ■2016年度卒業論文 - 凹凸面に振動を付加することによる錯触の効果 - 柔軟体幹を有する二脚歩行ロボットにおける能動的な腕振りの効果 - 仮想空間上のコマンド認識を想定した特異値分解による特徴量抽出 - 脚ロボットの不整地踏破における床反力測定ユニットの開発と評価 - ヒトを模した曲線状体幹構造が有する物理特性の計測 - 柔軟物を把持するための指先機構の設計と評価 - 簡略化した柔軟体幹を有する四脚ロボットによる不整地踏破 - 筋駆動跳躍ロボットの着地運動における適切な二関節筋配置の探索と検証 ■2015年度修士論文 - ヒト型ロボットの跳躍運動における二関節筋群の能動的発火の効果 - シミュレーション上のモデル構築をシームレスに行う3+1次元CADシステムの開発 ■2015年度卒業論文 - 空気圧人工筋駆動ロボットの跳躍における二関節筋の効果 - 体幹構造を有する実四脚ロボットにおける不整地踏破 - 触覚刺激を提示する装置の開発と検証 - 単独のアクチュエータで跳躍する脚ロボットにおける初期姿勢の影響 - 柔軟体幹の機構が直立二足歩行に及ぼす影響 - 実世界と仮想世界における物理特性の差異に関する調査 - 四脚歩行ロボットの不整地踏破における体幹構造と運動の連関 - 直立二足歩行ロボットにおける受動的な体幹と能動的な腕振りの効果 ■2014年度修士論文 - 生物規範型四脚ロボットのギャロップにおける柔軟体幹の効果に関する研究 ■2014年度卒業論文 - 仮想空間上の対象物を知覚するための錯触誘発システムの構築 - 単独のアクチュエータにより駆動する多関節ヒト型ロボットの跳躍実現 - ヒトの身体特性を模擬した二脚ロボットの歩行における上体機構の効果 - Controlling walking behavior of semi-passive walker utilizing trunk mechanism - 単独のアクチュエータで駆動する跳躍ロボットの運動解析 - 四脚歩行における視線安定化のための体幹設計 - ヒトに近い体幹機構による起き上がり運動の実現 - 二脚歩行ロボットの体幹機構取り付け部の開発と機構の運動解析 ■2013年度卒業論文 - 二脚歩行ロボットにおける柔軟体幹の動的効果 - 柔軟関節機構における空気圧アクチュエータの受動性を利用した対象物の物理特性推定 - 柔軟な脊椎機構を持つ四脚ロボットによる多様なロコモーションの実現 - 二脚直立歩行における腕振り運動が歩行に及ぼす動的効果 - 生物の身体構造を始点とするロボットのための進化的設計 - 二脚・四脚両形態変形ロボットのための体幹機構の設計 - 物理シミュレータにおける感覚的操作による簡便なモデル構築システムの開発 ■2012年度修士論文 - 筋駆動脚ロボットの連続跳躍における二関節筋の効果に関する研究 - Sensation of Contact Information by Compliant Joint Mechanism for Daily Usable Robot(修士論文公聴会最優秀賞) - 人工筋肉により駆動するロボットの適切な筋の選択に関する研究 - 四足獣の身体構造とロコモーションに関する研究 ■2012年度卒業論文 - ヒト上肢を模した体幹構造を有する準受動歩行ロボット - 体幹を有する準受動歩行ロボットの歩行実現 - 筋駆動ロボットの跳躍運動に対する筋配置の効果 - 路面とのインタラクションを利用したコイン形状体のハンドリング - 軽量・低コスト化を目指した筋電義手の開発 - 柔軟体幹を持つ四脚歩行ロボットの不整地踏破 ■2011年度修士論文 - ダイナミックな歩容獲得のための生物規範型四脚歩行ロボットの開発(修士論文公聴会最優秀賞) - 空気圧人工筋肉の受動性を利用した把持対象物の粘弾性推定(修士論文公聴会優秀賞) ■2011年度卒業論文 - 筋駆動跳躍ロボットにおける二関節筋の効果 - 二脚準受動歩行における体幹構造の効果 - 柔軟体幹を有する四脚ロボットの不整地踏破 - ヒト歩行モデルにおける体幹の効果 - 頑健・省センサ化を目指した重心位置推定エアマットの開発 ■2010年度修士論文 - 筋駆動二脚歩行ロボットにおける二関節筋収縮の力学的効果 ■2010年度卒業論文 - 体幹構造の物理特性と脚運動パタンのカップリングによる運動の創発と解析 - 空気圧人工筋の受動性を利用した物質の粘弾性推定システムの構築 - 体幹構造の物理特性が四脚歩行に及ぼす影響の調査 - 二関節筋を有する連続跳躍二脚ロボットの開発 - 筋駆動跳躍ロボットにおける二関節筋の効果 - マッキベン型空気圧アクチュエータを用いたロボットハンドのセンサレス化 - 体幹構造を有する二脚受動歩行ロボットの開発 - 空気圧人工筋の受動性を利用した粘弾性推定用ロボットハンドの開発 - センシング・ロボットコントローラのためのオシレータ回路の調査 ■2009年度卒業論文 - 脊椎構造の物理特性と脚運動のカップリングによるロコモーションの創発 - 仮想現実を用いた筋電義手訓練・設計システムの開発 - 空気圧人工筋を用いたロボットの跳躍における筋配置・サイズの検討 - 空気圧人工筋により駆動するロボットハンド指の姿勢・力推定 - 脊椎構造の物理的特性がロコモーションに及ぼす影響の調査 - 空気圧人工筋により駆動するロボットハンド指の姿勢・力測定器具の試作 - 空気圧人工筋により駆動する連続跳躍一脚ロボットの開発 ■2008年度卒業論文 - 二関節筋を有する空気圧駆動二脚ロボットの歩行制御 - 空気圧人工筋を用いた二脚ロボットの連続跳躍シミュレーション - バーチャルリアリティによる筋電義手性能評価システムの構築 - 拮抗駆動人工筋の相互作用を利用したロボットハンドの位置・力推定 |