特許とは -What is Patent -

特許権
「発明」に対してその独占的な実施を認めるのが、特許権。私たちの身の回りにある電気機器のほとんどは、複数の特許技術を組み合わせてできているのです。

特許とは

近年、新聞やニュースで「特許」という言葉をよく目にします。

この特許というのは、画期的な発明した発明者に対して、その発明を公開する代わりに、一定期間、その発明を独占的に使用することができる権利(特許権)を国が与えるものです。

スマートフォンなどの電気製品や車などあらゆる製品に、この特許が使われています。有名な例として、発明王エジソンが生み出した電球や、ノーベル賞で話題となったiPS細胞などがあります。

発明を保護する目的は「産業を発達させる」という点にあります。 発明者にとって、発明が保護されずに他人に簡単に真似されり、自分が得るはずだった利益を他人に横取りされてしまうと、その後発明を生み出すモチベーションが失われてしまい、新たな製品が生まれなくなってしまう可能性もあります。そうなると産業発展の機会が失われてしまいます。

画像:保護されないと・・・

反対に、発明者にアイデアの独占を永久に認めてしまうと、アイデアを使いたくても使えない人が出てきます。良いアイデアは皆が共有できた方が、より良いアイデアがそこから生まれるかもしれないのに、一人だけに権利を与えたままにすることは、社会に良い影響を及ぼしません。

そこで、発明者と、他の人が良いバランスを取れるように、発明者が一定期間、その発明を独占できるように保護するかわりに、そのアイデアを社会全体に公開して、独占できる期間が過ぎれば、みんなが使えるようにして産業を発達させることが特許制度の目的です。

画像:発明の保護

特許権を得るには

特許権を得るためには、自分が生み出した発明を書類にまとめて、特許庁に「こんな発明を考えました。特許権をください」と説明する必要があります。これをを「特許出願」といいます。

特許出願がされると、特許庁は最初に書類の不備はないかチェックします。次に、この発明に特許権を与えて保護してもよいかを判断します(新規性・進歩性の判断)。この発明には「特許権を与えても問題ない!」と特許庁が判断すれば、晴れて特許権を得ることになります。反対に、この発明は特許権で保護することはできないと判断されると、特許権を得ることはできません。

画像:特許取得

特許権となる発明とは

発明の定義

特許法では、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。
「自然法則」とは自然界において経験的に見出される科学的な法則をいい、発明の効果を反復して同一の効果が得られることを示しています。
「技術的思想の創作」とは、解決すべき課題を達成するために、第三者が実施可能で、かつ伝達可能な具体的手段が用いられていることを示しています。
これらを満たしたうえで、新しい何かを生み出し、かつ高度であることが求められます。

さらに、特許となるには「新規性」「進歩性」が求められます。「新規性」とは、これまでにない新しい(公知ではない)ものであり、「進歩性」は当業者(同等の知識・技術力を持つ者)が容易に考え出せないことを示しています。

特許権の力

独占排他権

特許権を持つと、他社の実施を排除し、権利者だけが実施を行うことができます。これは非常に強力な権利で、相手がワザと侵害をしておらず、たまたま同じであっても侵害とすることができます。

実施権

特許を実施する権利として、専用実施権と通常実施権があります。特許権者は、通常実施権を他者に与え、その対価をライセンス料を得るなどして、権利を活用することができます。

知的財産活用の事例

企業の知財活用

日本では、2002年に小泉元首相が「知的財産立国」を宣言して以来、知的財産の保護と活用が重視されています。利益を追求する企業にとって知的財産は非常に重要だという認識が広がりました。例えば特許権の保有者は、売却、使用許諾、特許の交換ができるなど様々な選択肢があり、場合によっては多額の利益を得ることもできます。そこで、知的財産権がどのように活用されているのかについて見ていきます。

事例①特許Aを使わせてあげるパターン

工大製作所が、電気に関する技術特許Aを持っていたとします。常翔製作所は、特許Aを使用できなければ、計画した鉄道事業の全てを取りやめなければならず多額の損失が見込まれています。そこで常翔製作所は、工大製作所に20億円で特許Aを使わせてくれないかと相談し、工大製作所はそれに合意しました。工大製作所は、特許Aを持っていたことで多額の利益を得ることに成功しました。

画像:発明の保護

事例②特許Aを売却するパターン

工大製作所が、電気に関する特許Aを持っていたとします。常翔製作所は、特許Aを使用できなければ、計画中の事業の全てを取りやめなければならず多額の損失が見込まれます。一方で工大製作所は、電気事業の分野からの撤退を考えています。そこで、工大製作所は常翔製作所と協議し、20億円で特許Aの売却をすることにしました。このように、特許権は売却をすることで利益を得ることができます。

画像:発明の保護

事例③お互いの特許を同等対価で交換するパターン

工大製作所は、電気に関する特許Aを持っていたとします。常翔製作所も、電気に関する特許Bを持っている。両社は互いの特許を使用したいと考えています。そこで、両社は同等対価の特許を交換しました。このような手法をクロスライセンス契約と呼びます。

画像:発明の保護

特許の話題・抱える問題

特許の藪(やぶ)

あらゆる企業が、発明として技術を特許化している現在、一つの製品を販売するのに他社の特許を避けることが難しくなっています。 そのため、自社製品に他社特許が含まれる場合、ライセンスをして侵害を回避しなくてはなりません。特許の数は膨大であるため、大手企業ではクロスライセンスという形で相互に特許を交換することもあります。
このようなことから、製造業やITビジネスなど特許が介在する製品・サービスを提供する企業では、綿密な特許調査が求められます。

ジェネリック医薬品

最近CMや広告で、またお医者さんや薬局に行ったときに「ジェネリック」という言葉を聞いたことはありませんか?ジェネリックとは後発医薬品のことをいい、新薬ではなく、すでにある薬と同じような成分の薬を安く・安全に提供しているものです。では、なぜ安く提供できるのでしょうか。実はここに特許権が大きく関わってきています。新しい薬は発明であるため”特許権”として保護されます。新しい薬には数億円や数百億円と莫大な開発費用がかかっています。この開発費用が新薬の値段が含まれているため、高い薬となります。しかし、特許期間が過ぎると誰でもその新薬に使われている発明を使うことが可能となります。そのため、莫大な開発費用をかけずに製造できるため「ジェネリック」は新薬よりも安い値段で提供できています。

このジェネリック医薬品については様々な問題があり、例えばジェネリックがないと貧困層の人達は正規の薬を買うことはできない場合があります。そうすると、人の生死に関わる問題となります。このような問題がある場合、優れた発明をしても世の役に立たないことがあります。このような場合、特許権等を開放(安く他社に作らせる)することにより、このような問題の対策を行う場合もあります。

発明は誰のものか

近年、LEDの発明についてノーベル賞を受賞したニュースが話題になりました。このLEDについても様々な特許が取得されていますが、過去にはLEDを開発した人と企業との間で特許を巡って争いがありました。

通常、企業においては発明者の報奨金が決められており、特許権は企業にわたります。しかし、従業員の発明の中にはイノベーションに影響を与える大発明が含まれることがあります。この場合、通常の発明と同じの取り扱いでよいのか、難しい問題となります。

特許を取得するメリット

特許を取得するメリットは、企業が高いお金を支払って投資した研究開発費用を回収できることににあります。例えば、ある発明の特許権を取得することができれば、他社は同じ発明を使うことができません。

特許になっている発明を利用したければ、他社は一定のお金を支払わなければなりません。このようにして得たお金は、新たな研究開発の費用に隔てることができ、企業の発展へとつながります。お金を得ることができる可能性が高まる特許権の取得が重要となるのです。