電子書籍の普及と著作権法上の問題

西出 朋輝

本論文では新ビジネスである電子書籍ビジネスの著作権問題を取り上げる。まず、近年の著作権法改正による権利制限規定および日本版フェアユースの検討動向を近年活発化している電子書籍ビジネスへの適用性の点から分析する。その結果、文化庁の著作権法制問題小委員会で示されたフェアユースの3類型は限界があることを明らかにし、これらに加えてC類型の文言にベルヌ条約9条2項に規定されているスリーステップテスト文言を基本とした変更を加えたD類型を新たに創設する提案をする。このD類型を現行著作権法と3類型に追加する形で導入することにより、電子書籍ビジネスにおける幅広い利用行為の法的根拠を得ることができる。