頒布権消尽論の是非についての考察〜判例を中心として〜

加藤 慎也

 映画の著作物に関して、解釈論上消尽しない頒布権という独自の権利が、著作者に認められている。何らかの動画を伴っている著作物の複製物の流通を制限できる権利である。 そうすると、映画DVD等に関しては自由に売買することはできないはずである。しかし、それらの売買が容認されていることも実態である。 これを反映した判例も出ている。最高裁はゲームの著作物について、頒布権が消尽するという旨の判決を下した。それでは、ゲーム以外の映画の著作物についても同様のことが言えるのではないか。権利の及ぶ範囲に区切りをつける必要性がある。本論文では、頒布権に関する判例等を検討し、頒布権が消尽する可能性について言及していく。