知的財産権制度による先住民文化の保護

知的財産研究科修了生

伝統的知識の保護に関しては、伝統的知識を利用する側である先進国と先住民が居住する途上国の間で意見の対立が生じており、未だに国際的な制度設立の兆しは見えない。本稿の目的は、この現状を踏まえて、既存の知的財産制度を利用することにより、第三者による伝統的知識の不正使用を防ぎ、その活用で利益を得ることで途上国が経済的な自立を果たすことができる仕組みを考察することであり、そのために、諸外国における伝統的知識の保護形式、裁判や権利登録の事例を検討した。その結果、最も伝統的知識の保護に適しており、かつ先住民の実情に合った取り組みは、公的機関が証明商標の所有者となり、運営していく形式であるとの結論を得た。