進歩性判断における用途限定の意義について

原 桂

物の発明、特に化学分野の発明においては、物の形状・構造などからその物を特定できない場合、物の用途を用いてその物を特定しようとする場合がある。かかる表現形式で記載されている場合において、請求項に係る発明についての発明の認定方法は審査基準で示されているが、その判断基準は未だに明確とはいいがたい。 本稿では、進歩性判断における用途限定の意義について、先行文献や審査基準を通して検討した。さらに後半では、事例検討として、平成18年(行ケ)第10303号特許取消決定取消請求事件を取り上げた。本事件をとおして、物の用途を表現した場合の発明の評価および進歩性との関係の考え方について検討を加えた。