キルビー特許訴訟事件 〜富士通の訴訟遂行能力について〜

齊藤 遼平

日本の富士通株式会社と米国のTI社(テキサス・インスルメンツ)が争った「キルビー特許侵害・損害賠償請求権不存在確認訴訟事件」を研究対象として、企業の知的財産戦略ひいては知的財産管理の在り方を考える。本事件は、TI 社のジャック・キルビー氏が発明した半導体集積回路の基本特許であるキルビー275特許を根拠にTI社がライセンス料の支払いを日本の企業に求めたのに対して、富士通のみが当該特許に関し10年にもおよび闘い抜き、従来は特許庁(行政)の無効審判の事件事例とされていた特許の無効の判断を裁判所・司法も行うことができる最高裁判決を勝ち取った事件である。本事例研究では、富士通の勝訴の要因を分析し、いかにして、富士通が国際的な知的財財産紛争を処理する能力を身に付け、その能力を伸ばしてきたのかを検討する。