企業の「知的財産紛争処理能力」について―IBM事件を通して―

宇路 公美子

1960年代、半導体を製造するためには、フェアチャイルドやWE、TIの基本特許を使用する必要があった。1965年には、TIのジャック・キルビー氏の発明した半導体特許が日本に多数出願・公告され、日本企業は異議申し立てを行う一方で、ライセンス交渉に臨んでいた。1989年に、いわゆる275特許が登録査定を受け、TIの提示した高額のライセンス料を支払うことを選択していく日本企業の中で、非抵触の確認を求め、訴訟を提起した企業があった。それが富士通である。
この研究では、なぜ富士通だけが訴訟で争うことを選んだかとのテーマの下、富士通のこれまで経験した知財訴訟との関係から、知財紛争処理能力について検討を行う。