車椅子事件における進歩性判断に関する考察

山本 博之

進歩性判断は、法的価値判断に属し、類型化が難しく、一律な判断を行いにくい厄介な問題である。本報告書においては、平成17年(行ケ)第343号審決取消請求事件の第3次判決について取り上げ、@判示された考案の要旨認定についてリパーゼ判決に基づく観点から検討を行い、「特段の事情」の有無に関わらず、いずれの場合から判断しても当該判示には問題があること、A考案の進歩性判断について「後知恵」による判断の疑いがあること、B本判決における一連の判断手法が所謂「容易の容易」に陥っており、且つ、その場合に「段階ごとにおいて容易」の判断したのみで、必須である「全体としても容易」の検討が欠落している旨を指摘した。