進歩性判断における効果及び間接事情の参酌

酒徳 美里

本研究は、東京高等裁判所と独国連邦最高裁判所双方によって判断された車輪懸架装置及びそのための圧縮コイルばね事件を取り上げ、我が国の進歩性の判断の基準について検討するものである。本件は、裁判における引用例・本件特許クレームが日本と独国において完全一致しているにもかかわらず、両裁判所は異なった判断を下した事例である。これを受け、特許の審査基準において大きな比重を占める進歩性判断に焦点を当て、論理付けにおける各段階、つまり、構成の容易推考性及、効果の参酌及び間接事情の参酌についてとりあげ、なぜ両裁判所は異なる判断を下したのか検討した。