予測できない効果を主張して進歩性を主張する反論の有効性 〜特に化学分野〜

河崎 有美

 本論文では、出願人が発明の進歩性を主張する際に、@化学分野で効果の主張は有効か、A特許庁や裁判所では、効果の主張はどのように取り扱われているか、B効果を主張するために、明細書にはどのような記載をしておけばよいのかの3点について、裁判例をもとに考察しつつ、発明の効果の主張の有効性について検討した。その結果、化学分野であっても、有利な効果が参酌されて進歩性が認められる場合は多くはないが、予想される引用例と比較可能な客観的なデータ、又は、官能試験による実験結果ではなく数値によるデータを有利な効果として、できるだけ出願当初の明細書に記載しておき、それを主張することが有効であることが判明した。