日本経営システム学会関西支部 −第2期

     
  1. 期 間

     1997年4月1日〜1999年3月31日
     
  2. 支部役員

     顧 問:栗山仙之助(摂南大学)
     支部長:能勢豊一(大阪工業大学)
     副支部長:中桐大壽(摂南大学)
     運営委員:下左近多喜男(大阪工業大学),森 建一(関西大学)
     監  事:大西 学(松下電器産業株式会社),阪口 弘(シャープ株式会社)
     事務局:椎原正次(大阪工業大学)
     
  3. 活動記録−1997年度

    第9回研究会(7/12実施・大阪工業大学9号館大学院講義室・参加者16名)
    @報告者:金子浩一 氏(ヤンマーテクニカルサービス株式会社)
     演 題:『TQMのレベルアップによるこれからの経営管理システムの在り方』
     内 容:近年のネットワーク化、国際化、グローバル化の進展に伴って、世界のあらゆる拠点で調達される材料・製品を標準化するための仕組み造りが、製造業において焦眉の急となってきている。小集団活動、QCサークル活動、TQC活動などに代表される日本的経営の手法は、新たに製造・環境などの国際的なインフラ標準を導入する形で、その経営品質あるいは品質経営に対する姿勢を大きく軌道修正しつつある。本講演では、このような世界レベルでの動向を、トップマネジメントの立場からどのように捉え、経営管理システムの信頼性向上に結び付けるかという問題について議論された。

    第10回研究会(9/20実施・大阪工業大学9号館大学院講義室・参加者10名)
    @報告者:伊東鉄男 氏(大阪商工会議所)
     演 題:『顧客満足度(CS)経営について』
     内 容:「顧客満足度(CS)経営に関する調査報告書」(大阪商工会議所調べ)から、CS経営に対してトップは顧客満足度の理念は認識しているもののCS経営の具体的な実施方策がほとんどなされていないことを示した。そして、CS経営には顧客競争優位性が重要であり、その考え方、CS経営の推進手順、事例などが紹介された。本講演では、企業経営においては基本である顧客満足度を満たす企業が将来にわたり存続・成長できることが示された。さらに、CS経営に役立つ手法などについても討論された。
    A報告者:平林直樹 氏(大阪府立大学)
     演 題:『経営システムにおける生産スケジューリングの動向』
     内 容:近年の製造業は、炭酸ガスによる地球温暖化、膨大な廃棄物、エネルギー/資源問題など様々な課題を抱えている。これらを解決するために知的生産システムプログラムなどの国際共同研究が種々進められ、生産スタイルの根本的な見直しが急務となっている。本講演では、次世代生産システムとして脚光を浴びている自律分散型の生産システムにおいて、環境ダイナミクスに柔軟に対応するための生産スケジューリングの方法論が論議された。

    第2回工場見学会(10/24実施・花王株式会社・堺ロジスティックセンター・参加者25名)  見学先:花王株式会社
     内 容:花王株式会社の堺ロジスティックセンターは、近畿圏の7割の商品を扱っていおり、受注後24時間以内に配送を完了する物流拠点である。このセンターの収容能力は800,000個、出荷能力は梱物なら3,000個/時、バラ物なら1,000日個/時である。そして、自動倉庫や自動ピッキングシステム等の見学が行われた。ここでは、きめの細かい品質管理と高回転出荷システムの構築が目標とされていた。実際に、従来では1時間以上かかっていたピッキングを3分以内に完了するなど自動化の成果について解説があった。さらに、今後の自動化の問題点についても詳細な解説があった。

    第11回研究会(1/31実施・大阪工業大学9号館大学院講義室・参加者18名)
    @報告者:村杉 健 氏(大阪工業大学)
     演 題:『雇用のジェンダーレスに関するクオドラント分析』
     内 容:従来の経営システムとりわけ人事システムは、男性中心であり女性は補助的であった。しかし、労働力人口の減少が始まり、女性の基幹的活用が叫ばれ、企業は男女均等化(ジェンダーレス)へ経営システムの変更を余儀なくされている。1996年の兵庫県の調査を、産業別規模別、均等化類型別、価値観類型別に4者比較(クオドラント分析)し、フェミニズム型とジェンダーレス型の企業があり、スーパーウーマンとキャリアウーマンが支えていることを実証した。
    A報告者:久米靖文 氏(近畿大学)
     演 題:『生産システムのパラダイムシフトと作業者について』
     内 容:生産システムは、これまで自動化すれば生産性や経済性が向上すると考えられてきた。しかし、消費者ニーズの多様化により、市場環境も多種少量生産から変種変量生産へと移行している。この変化に対応するには、ハードウェアとソフトウェアのバランスのとれた組織化が必要となってくる。本講演では、生産システムのパラダイムシフトを人的面から捉え、そこで発生する問題についての研究を中心に述べ、そこで作業する作業者がどうあるべきかについて検証した。

    第3回工場見学会(2/20実施・小西酒造株式会社・伊丹工場・参加者10名)
     見学先:小西酒造株式会社
     内 容:小西酒造株式会社は、白雪の名前でよく知られている。1550年に創業して、現存する最古の蔵元である。そして、不易流行の精神で経営を進めている。四季醸造を開始したり、清酒をビンから紙パックにして販売を始めたのが小西酒造である。今回の工場見学では、200年前に作られた蔵で、日本酒が製造される工程について見学した。また蔵出しの原酒を試飲した後で、杜氏と日本酒の製造方法についての質疑応答があった。

     
  4. 活動記録−1998年度

    第12回研究会(4/11実施・大阪工業大学9号館大学院講義室・参加者11名)
    @報告者:松田貴典 氏(日本ユニシス株式会社)
     演 題:『情報システムの脆弱性−情報技術のビジネス活用の高度化に伴う脆弱性−』
     内 容:情報システムは、技術革新とともに高度化し、企業環境のみならず家庭環境をも変革させ「豊かな情報化社会」をもたらした。しかし豊かな情報化社会の裏では、情報システムが高度化すればするほど、情報システムの脆弱性が増大し、事故、災害、犯罪等の脅威が現実のものとなって、大きな被害をもたらすことになる。情報システムの事故、障害は、企業にとって経営の存続を危ぶませることになり、ひいては社会機能、家庭機能にも麻痺状態の混乱をもたらすこともある。ここでは、コンピュータの不正使用、犯罪、プライバシー問題等の新しい社会問題化を引き起こしている現実を(1)情報技術、(2)経営管理・組織、(3)国際・社会、(4)法・倫理の4つの側面から類型化し、演繹的な解決に向けた取り組みを論じた。さらに情報システムの脆弱性にかかる事例を分類し、多くの取り組まなければならない問題についても指摘した。
    A報告者:安本哲之助 氏(ニッセイコンピュータサービス株式会社)
     演 題:『ネットワークセキュリティと災害対策−システム監査からのアプローチ−』
     内 容:ここ数年の情報通信ネットワークの進展は著しいものがあり、企業の業務領域での利用は急激に拡大している。このような情報システムの環境の変化もあってLAN環境における情報システムの機能確保の重要性は1995年の阪神大震災以降、急速に増してきている。しかし、その後の情報化の進展に対して、不測の災害時における通信回線の切断、麻痺等による情報システムに与える混乱やダメージは、当時に比べて一層増幅される懸念がある。ネットワークセキュリティには、論理的側面と物理的側面があるが、研究会では後者の安全対策問題について焦点を絞り、情報通信ネットワークの災害対策をシステム監査の視点から検討した成果について論じられた。

    第4回工場見学会(6/5実施・武田薬品工業株式会社・大阪工場・参加者7名)
     見学先:武田薬品工業株式会社
     内 容:武田薬品の大阪工場は、160,000uの敷地があり約2,600名が勤務している。このなかで、約450名が医療用医薬品や一般家庭用医薬品の製造に携わっている。また、敷地内に工場以外に研究所、コンピュータセンター、知的財産、資材部門などの本社機構も設置され、全社の生産、研究、試験、分析、管理センター的な存在となっている。そのなかで今回は、固形製剤の主力製造設備であるC70工場棟を見学した。この棟では、原料秤量から整粒、混合、製錠、フィルムコーティング、検査・印刷、PTP、結束、袋詰め、箱詰め・封緘・捺印、Pケース詰めまでの一連の工程が完全自動化されていた。さらに、製薬メーカにおける研究開発費の占める割合とその重要性についても解説された。

    第13回研究会・総会(6/27実施・学校法人大阪工大摂南大学創立60周年記念館4階セミナーF・参加者28名)
    @報告者:石井博昭 氏(大阪大学)
     演 題:『投票データに基づく経営意思決定』

    第14回研究会(7/18実施・関西大学工業技術研究所・参加者12名)
    @報告者:泉井 力 氏(関西大学)
     演 題:『ネットワーク組織におけるリーダーの役割』
     内 容:ネットワーク組織が現実の企業でどの程度実現しているかを吟味しながら、その組織におけるリーダーまたは管理者の採るリーダーシップ行動を測定し、リーダーシップ行動の効果について議論した。検討されたリーダーシップ論は次の3つのコンセプトであった。すなわち、PM論を多次元化した管理者行動論と成員の自主性を特に尊重するセルフリーダーシップ論ともう一つはポリエージェント・パラダイムからネットワークリーダーシップ論であった。検定の結果、それぞれのコンセプトの中で言われている特質が確認された。
    A報告者:河野昌藏 氏(河野昌藏労務事務所)
     演 題:『VDT作業における健康障害』
     内 容:VDT作業と健康障害との関係について解説がなされた。ここでは、まずVDT作業と事務作業の違いについて述べられた後に、具体的な障害の事例が示された。特に、VDT症候群とよばれる健康障害について詳しい説明がなされた。そして、労働省の基準をもとにVDT作業による障害の回避方法について論じられた。

    第15回研究会(9/26実施・大阪産業大学・参加者10名)
    @報告者:前川佳徳 氏(大阪産業大学)
     演 題:『バーチャル技術と通信ネットワークが変える社会と経営システム』
     内 容:バーチャル技術と通信ネットワークによる遠隔作業の可能性によって、オフィスでの仕事の方法がどのように変化するかについて、ビデオ「未来オフィス」を用いて解説があった。ついで、グローバル化、ボーダレス化による「ものづくり」における変化の予測について紹介された。また、生産システムの変遷を考察し、トフラーが予測した情報化社会における動向を考慮した場合、分業化から一貫化への移行、たとえばCAD/CAM/CAEなどは同一の作業者によって一貫して行われることが望ましいのではないかと提案された。
    A報告者:中野 廣 氏(大阪産業大学)
     演 題:『市場環境が及ぼす生産方式変遷−アパレルおよびその周辺産業を事例に−』
     内 容:アパレル産業を事例として、生産方式がこれまで市場環境の変化に対応して最適地を得られるよう形態を変化させてきている状況を価値論との関連で論じられた。特に、問題案として周辺産業を含めた全体構造の硬直化をあげ、マーケットイン的発想によるとするQRの必要性と、逆に、本質的にマーチャンダイズ力の未成熟によるしわ寄せが産業にきている点を指摘された。そして今や、生産はサービスの一環として位置づけられるようになった矛盾を明らかにした。その上で、今後すすむべきリストラクチャリングの方向を示した。

    第16回研究会(10/24実施・神戸学院大学・参加者11名)
    @報告者:能勢豊一 氏(大阪工業大学)
     演 題:『グローバル経営とこれからの経営システム』
    A報告者:日高謙一 氏(神戸学院大学)
     演 題:『量販店の成長がもたらした取引関係の変化−家電業界−』
     内 容:1960年代後半から1970年代にかけて、家電流通業界には家電専門量販店が成長してきていた。それによって販売会社の流通機能の一部はメーカーに統合されていった。すなわち、量販店に対する営業活動はメーカー営業所が担当することになり、販社は物流機能を果たすだけとなった。現在、この物流機能もまたメーカー主導で行うか、小売主導で行うかの垂直的競争が行われていることが論じられた。

    第17回研究会(12/12実施・桃山学院大学・参加者17名)
    @報告者:佐々木 宏 氏(桃山学院大学)
     演 題:『組織間関係への情報化投資マネジメント』
     内 容:近年、流通チャネルの簡素化、製販統合、SCM(Supply Chain Management)の適用など、サプライ・チェーンに対する変革がドラスティックに進んでいる。一方で、既存の仕入先や顧客との組織間関係が足かせとなって、それらが迅速に進展していかない状況も顕在化している。本報告では、卸売業者がサプライ・チェーンの中間に存在すること、EDIがサプライ・チェーン改革の基本要件となっているという認識から、卸売業のEDIを対象に、EDI実施の側面で典型的な3業種を抽出し、それぞれの事例を比較した。その結果をもとにして、組織間関係への情報化投資の特徴とマネジメントの問題点について論じた。
    A報告者:下崎千代子 氏(奈良産業大学)
     演 題:『テレワークの日米比較』