甲巻の一部を
紹介

 

兎と蛙の相撲

甲巻の第17紙から第18紙にかけて描かれているのは鳥獣戯画の中でも人気の高い、相撲のシーンだ。
第17紙には囃し立てる見物の兎や、兎の耳を噛む蛙などが、表情豊かに描かれている。 第18紙では兎と蛙の勝負の行方が明かされる。
軍配は蛙に上がり、蛙の口からは気炎が立ち昇っている。こういった目に見えないものを線で表現するところは現代の漫画にも受け継がれている手法だ。
また、この兎と蛙は直前の第17紙で相撲をとっていた兎と蛙と同一で、左にスクロールするだけで時間の経過を表現する、「異時同図」の技法が用いられている。

追いかけっこ

甲巻の第13紙から第14紙に続く猿、兎、蛙の追いかけっこは、「年中行事」の印地打いんじうちを描いたのではないかという説がある。
印地打ちとは旧暦の正月や端午の節句に行われた、合戦を真似て二手に分かれ石を投げ合う子供の遊び行事で、 石以外にも棒や刀を振り回すこともあり、大人が参戦するようになると過熱し、死傷者が出ることもあった。
第14紙に描かれている蛙は大の字にひっくり返っている。
甲巻の後半、第21紙から第22紙にかけて描かれた法会のシーンに登場する仏像は蛙であることから、この印地打ちで斃れた蛙の供養ではないか、 という説もあるが、やはり詞書ことばがきがないため詳細は不明である。

また、終盤に出てくるこの蛙の仏像は、印地打ちで殺された蛙の葬式、という説や、蛙が阿弥陀如来を演じているという説もある。
如来には「手足指縵網相しゅそくしまんもうそう」という、水も漏らさないように、衆生を救う(掬う)ために水かきがあったとされる。
水かきがある蛙が阿弥陀如来の役をしている、と考えると自然ではあるが、印地打ちで殺された蛙の供養、というのも皮肉が効いて面白い。

的弓

第5紙から第7紙まで続く的弓のシーンは、「年中行事絵巻」の賭弓のりゆみの場面とよく似ており、 兎と蛙が賭弓をしているのではないかと推測されている。
賭弓は平安時代の宮廷年中行事のひとつで、天皇の御前で近衛府と兵衛府の武官が弓の腕を競った。
勝者は舞を奉納し、賭物のりもの(勝負事にかける金品)を賜るが、敗者は罰盃を強いられた。
第5紙では的の付近にいる狐が尻尾に狐火を灯し、兎と蛙は指を立て、何やら数えている様子。
恐らく、的に当たった矢の数を数えているのだろう。
第6紙は射者と的までの間を描き、第7紙では弓を念入りに点検する蛙など、二つの陣営に分かれて控えている様子が描かれている。

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