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有機ハロゲンの計測と制御

環境工学科 
教授 渡邊 信久

渡邊 信久
2014.04.14
  • 【写真1】ヘリウムプラズマ発光・分光分析装置    右下の青い箱がプラズマ電源、中央下左寄りの黒いものがCCDつき分光器です。試料注入、ガス配管、放電管や光学系の調整は、実験者自らが行います。

    【写真1】ヘリウムプラズマ発光・分光分析装置 右下の青い箱がプラズマ電源、中央下左寄りの黒いものがCCDつき分光器です。試料注入、ガス配管、放電管や光学系の調整は、実験者自らが行います。

  • 【写真2】廃棄物焼却施設での排ガス採取    煙突に導入される排ガスを吸引し、目的物質を捕集管に吸着させます。

    【写真2】廃棄物焼却施設での排ガス採取 煙突に導入される排ガスを吸引し、目的物質を捕集管に吸着させます。

  • 【写真3】燃焼分解実験装置  電気炉(約1000 度)で加熱した石英管の中で試料を燃焼させます。試料はセラミック製の燃焼ボートに乗せて、挿入します。この石英管から出てくるガスを調べるのです。

    【写真3】燃焼分解実験装置 電気炉(約1000 度)で加熱した石英管の中で試料を燃焼させます。試料はセラミック製の燃焼ボートに乗せて、挿入します。この石英管から出てくるガスを調べるのです。

ダイオキシン類は、燃焼に塩素(Cl)分があると生成します。「類」ですから、何百種類も仲間があって、法律ではその中から毒性のあるものだけを取り出して分析することになっていますが、この計測には、多くの費用と時間がかかります。そのために、「早く、簡単にダイオキシン類の仲間を計る」装置を、開発しました。
私たちの研究室では、この装置を3台作っていて、燃焼実験や現場モニタリングに使っています。原理は、有機状態の塩素(Cl)の量を調べるもので、そのために、ヘリウムプラズマ発光・分光分析装置を作ったのです。初めて完成したのが1999年で、プラズマ部分は1990年代の半導体製造の急激な進歩によって、分光分析部分はデジタルカメラの受光素子であるCCDの出現で、この装置がとてもコンパクトになりました。当時の最新技術は、電気・電子に素人の私にとっても、とても魅力的だったのです。私が、ドイツ留学中に試作機を作り、帰国後に大幅に改良しました。この2001年には、「分析化学」誌の論文賞も受賞しています。最近は、類似の研究論文が、世界各地から報告されるようになりましたが、私たちの装置は、たぶん、世界で4番目(すでに、米国で2件、ノルウェーで1件発表がありました)です。感度や安定性の向上など、いまでも大学院生の手で改良が続けられています。
3台のうちの1台は、兵庫県の廃棄物処理施設へ持って行き、排ガスモニタリングもしています。塩素と同時に臭素も調べています。これら、ハロゲン元素は、とても有用な化合物をつくるものなのですが、廃棄物となり、燃焼で分解されていることを調べているのです。
この燃焼分解を、私たちは室内でも実験しています。電気炉と燃焼管で装置を組み、試料を燃焼させてガスを捕集して、先ほどの「ヘリウムプラズマ・・・」で計測します。すべて手作業の実験ですから、燃焼装置のセッティングから計測まで、大学院生が中心になって進めています。ナノグラムレベルの実験ですから、色もにおいも感じることはできないのですが、実験を何度も繰り返しているうちに、試料の化学物質が分解していく様子がだんだんと見えてくるようです。「次にやってもそうなるのですか?」の質問に、「Yes!」と言えるまで繰り返すのが、大工大流です。
今回は、研究室名「廃棄物共存工学」の「廃棄物処理」の部分の紹介をしました。もう一つのテーマ 「リサイクル製品との共存」については、次の機会にお話したいと思います。乞うご期待。