バイオ藻類グループ

石油を作る微細藻類
Botryococcus (ボツリオコッカス)

バイオ燃料とは 〜 植物由来の再生可能燃料 〜

植物由来燃料は光合成によって大気中の二酸化炭素を原料として作られるため、二酸化炭素の排出量増加にならない、カーボンニュートラルな燃料といえます。 バイオ燃料とは、植物に由来する再生可能燃料ということができると思います。すでに実用化されているものとしは、大きく3種類あり、トウモロコシやサトウキビなどの農作物の糖類を発酵させてアルコールにしたバイオエタノール、タネに蓄積している油分を抽出したバイオディーゼル、そして、木材になります。いずれも再生可能であり、光合成によって大気中の二酸化炭素を原料として作られるため、二酸化炭素の排出削減につながる燃料といえます。

微細藻類によるバイオ燃料生産

ガス全体に占める比率

石油を作る微細藻類 Botryococcus braunii

バイオ藻類グループは微細藻類からの燃料生産をテーマにしています。
このようなバイオ燃料ですが、水中に生息する小さな光合成微生物である微細藻類もまた、バイオ燃料を作ることが知られています。

微細藻類による燃料生産はとても効率的?!

Chisti (2007) Biotechnol Advances 25: 294-306

微細藻類は根も幹も必要ないので、光合成で生産した有機物を効率的に油に変換することができます。
現在世界の研究者が微細藻類によるオイル生産に取り組んでいます。
2000年代に入り、微細藻類によるバイオ燃料生産は、陸上植物よりもはるかに効率的で生産性が高いのではないかと言われるようになりました。なぜなら、陸上植物も微細藻類も、どちらも光を受けて光合成によって有機物であるグルコースを合成し、これを体内で変換して油を作りますが、陸上植物の場合は、その多くを幹や根に投資する必要があります。それに対し、微細藻類では、根も茎も必要ありませんので、光合成産物の大半を油に変換することも可能になります。その結果、単位土地面積あたりのオイル生産性は、微細藻類の方がはるかに高いのではないかと言われるようになり、注目が集まりました。

オイル生産藻類Botryococcus(ボツリオコッカス)とは

Botryococcus braunii(通称:ボツリオ)

  • 淡水性の緑藻
  • 群体を形成し、細胞間マトリックスに多量の炭化水素を蓄積することから、「石油を作る微細藻類」と呼ばれます。
  • 細胞の外に油を蓄積するため、細胞を殺さずに油だけを回収することができます。

Hirano et al.,Sci.Reo.9:16974(2019)

ボツリオコッカスの第一の特徴は、重油相当の非常に炭素鎖の長い炭化水素を生産し、それを多量に蓄積する性質です。株や培養条件によって変わりますが、予々、全重量の25-75%が炭化水素になります。さらに、その炭化水素を細胞の外に蓄積する性質を持つことです。この微生物は100から200程度の細胞が塊になって群体を形成する性質があり、細胞内で合成した炭化水素を細胞の外に移動させ、群体内の細胞と細胞の間の空間に蓄積する性質があります。

ボツリオコッカスは現在私たちが利用している化石燃料を作った生き物の一つであると考えられています

また、この微生物は、現在私たちが利用している化石燃料を作った生き物の一つであると考えられています。この写真は、オイルシェールという油分が豊富な岩石の断面図を顕微鏡で観察した様子です。多量のボツリオコッカスの化石が見つかります。ボツリオは、数億年前から地球上に存在し、多量に増えた時代、場所があり、それが化石燃料の一部になってきたと考えられています。したがって、やがて枯渇するとされている化石燃料の代替燃料を作る上で、現在も生きているこの微生物を利用することが考えられたわけです。

当センターでは国内外でボツリオコッカスの探索を行っています。

採水サンプル地点の例

2015年から現在まで200以上の湖沼で採水調査
約20ヶ所でB. brauniiを発見、250株以上を単離
Kawamura et al. (2020) J. Ecosyst. Ecogra.

ボトリオコッカスの短所は増殖速度が遅いため、培養が難しい点にあります。
当センターでは各地で採取した株の分析を行い、増殖能力の高い株を得ることに成功しました。
さらに高能力の株を得るため、ゲノム解読、突然変異株の作成、培養方法の開発などを、他大学・研究期間と共同で取り組んでいます。