イノベーションを生み出す 共創・共感のデザイン思考 NEDO特別講座 ロボットサービス・ビジネススクール 学校法人常翔学園 大阪工業大学
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40ドローン【福島会場】 シーズ先行型の新製品開発では、ニーズとシーズ両方の認識から、別なニーズを発見していきます。企業が、自社の持つ技術をどのように使えるのか、その用途を開発していく実例として、私の研究室で作成したキャリーバッグをご紹介します。これは、ふらつきを抑えるために、持ち手が端に1本ある設計です。さて、この技術で何ができるか。私は、座れるキャリーバッグというアイデアを発想しました。このバッグなら、信号待ちや駅のホーム、空港の税関で並ぶとき、座って待つことができる。開発時は考えなかったけれども、「疲れたら、どこでもいいから腰を下ろしたい」というニーズを発見したということです。これができると、何ができるかということで、私は「できる展開」と名付けました。 「できる展開」は、これができると、何ができるかを自問自答していく方法です。本日のテーマである、ドローンの用途開発を「できる展開」してみます。最初に、技術特徴をリストアップします。ドローンは、空中で「静止できる」「水平移動できる」「垂直に上下移動できる」「3次元を自由に移動できる」という特徴が挙げられます。次に、各シーズから「できる展開」してみましょう。例えば、空中で静止できることで何ができるのか。工場であれば広い敷地にある在庫の状況を確認する、大きな化学プラントを監視する、牧場の羊や牛の行動を監視するなどを考えたとします。すると、またここから、それで何ができるかを考えることができます。空中の1点で静止して監視できれば、ドローンから、在庫を減らせとか、化学プラントの点検の指令を送ることができるというように、用途開発できます。 用途開発では、まず、自分たちが持つ技術を明確にし、言語化することが重要です。リストアップして言語で表現することで、ある技術を開発しているときに、本来の技術とは違う技術を見つけることができるかもしれません。それが、用途開発のアイデアで、ニーズを発見するということです。システム思考と用途開発について早稲田大学 黒須 誠治 名誉教授

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