イノベーションを生み出す 共創・共感のデザイン思考 NEDO特別講座 ロボットサービス・ビジネススクール 学校法人常翔学園 大阪工業大学
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3 本テキストは、NEDO講座である「NEDOプロジェクトを核とした人材育成、産学連携等の総合展開/ロボットの社会実装におけるイノベーション創出人材育成」に関する調査を累計4年間にわたって行った活動内容とその成果をまとめたものである。サブタイトルにはロボットの社会実装という言葉を使用しているが、本活動を行う中で日本のみならず海外における様々な分野の人材との交流、勉強会を通して、社会実装という言葉ではイノベーションを起こすには不十分であることが分かってきた。それは、単にサービスロボットを社会に実装したとしても、使い手である一般の人たちの理解(共創)と共感(共創)が得られない限り、ロボット技術を継続して活用しライフスタイルを進化・発展させるライフスタイルイノベーションは起こり得ず、新たな未来社会は生み出せないことが分かってきたからである。具体的には、ロボットという商品の本質に関わる課題をしっかり分析・理解した上で、社会で継続して活用できるような仕掛けを考えて社会に実装をしていかなければ、単にサービスロボットを社会実装しただけでは、ライフスタイルのイノベーションは起こせず一過性のものとして忘れ去られて行く運命にあることを理解しておく必要があることを意味している。 では、そもそもロボットという商品とはどのようなものなのだろうか?産業用ロボットは、製造現場で溶接作業など人にとっては3K(きつい、汚い、危険)と言われる作業を代替するロボットという商品になる。一方、本プロジェクトのテーマの中心になるサービスロボットは、産業用ロボットのように人と隔離して作業をこなすのではなく、人とふれあい協同して作業を行うロボットである。安全性を考えると、ロボットは絶対安全を担保できないので、どのような使い方をするかといったルールを決めていく必要がある。また、二足歩行で両腕を持った人間に合わせて構築された現在のインフラが、ロボットにとってもバリアフリーとはいえないため、ロボットが活動しやすくするためのインフラ整備も必要となるかもしれない。 一方、ロボット技術者の夢は何なのであろうか?いろいろな意見があると思うが、目指すべき究極のロボット技術は、地球上の生物の頂点に立っている人間が、我々と同じような形態で、知能、運動能力が人間を超える存在(アンドロイドとかヒューマノイドと呼ばれている人型ロボット)を創造することにあるのではないだろうか。実用的な人型ロボットが実現すれば、ロボットが我々をサポートして、人間が支配し暮らしている我々の生活をより豊かにしてくれるであろう。その夢を実現するために、ロボット技術者は日々研究開発をしているわけである。  ロボットの頭脳であるコンピュータの処理能力は向上しチェスなどでは人を負かしてしまう人工知能と呼ばれる高性能な知能処理技術に進化してきたが、残念ながらロボットの身体能力はモラベックのパラドックスを覆すことはできていないのが現実である。はじめに

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